さとう珠緒は、あの頃と同じく小柄で華奢な体を、純白レース素材のワンピースと、水色に透けるカーディガンに包んで現れた。撮影が始まると、階段の手すりに両肘をついて片足をそっと跳ね上げたポーズを取り、小首を傾げる。そしてカメラを見上げ、幾種類もの笑顔を送っていく……。今年で48歳になった彼女は今も、私たちが思い描く“さとう珠緒”そのものを見せてくれていた。

 ゼロ年代、テレビを点ければ、そこにはいつもさとうの姿があった。ぶりっ子キャラでバラエティ番組を席巻した彼女は、今の“あざとい”ブームの先駆者と言えるかもしれない。だが、その代わりにさとうは――世間から嫌われた。

さとう珠緒さん

 当時、各局の番組に次々と出演しながら、さとうは何を思っていたのか。いや、そもそも、テレビカメラが回っていないときの“本当のさとう珠緒”は、どんな人物なのだろうか。今、改めて本人に聞いてみた。(全2回の1回目/後編に続く

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(文中敬称略)

子ども時代の忘れられない記憶

 ICレコーダーを向けられたさとうは、こちらが心配してしまうほどに謙虚・謙遜の塊のような女性だった。

「ほんとすみません、私なんか。私、頭がよくないんですよ。ほんとに脳みそが鳥レベルなんだと思うんですよね……」

 聞いているこちらが申し訳なく感じてしまうくらいの謙遜ぶりだが、そんな言葉も明るい声で、まっすぐ目を見て語ってくれるため、「いえいえ、そんな……」と応えているうちに、いつの間にかさとうの“間合い”に引き込まれているような気がする。「最近は鏡を見て、年齢を感じることもあります。そろそろ更年期も来るだろうし、ヤバイですよね」

 1973年生まれ、千葉県船橋市出身。どんなお子さんだったんですかと尋ねると、「わりとポンコツ系?っていうか……。周りの大人からは、一つのことに集中しちゃうと他が見えなくなるって心配されていたようで、よく迷子になっていたんですよね。親の後ろにくっついていたと思ったら、全然違う人だったり」。

 

 幼い頃には迷子のせいで“警察沙汰”になったこともあるそうだ。「たぶん遊園地だったと思うんですけど、そこで迷子になっちゃって、自分一人で帰ろうと思ったんです。いろいろな人に住所を伝えて、わからなくなったらまた聞いてとかやっていたら、ある方が警察に電話してくれて。それでパトカーに乗って帰りました」

 そんな子ども時代を過ごしていたさとうには、まだ小学校に上がるか、上がらないかの頃、もう一つ忘れられない記憶があるという。