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「私、こんなことやりたいのかな」さとう珠緒48歳が振り返る“幻の地下アイドル時代”

さとう珠緒さんインタビュー #1

2021/06/26
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「競馬場に行くのが楽しみでした」

「おじいちゃんが船橋で厩務員さんをやっていて、競馬場に行くのが楽しみでした。サラブレッドは性格的に荒い子もいるので、怪我をする危険があるからあんまり近づいちゃいけないよと言われていたんですけど、私はほんとにお馬さんが大好きで、よく大人の目を盗んで忍び込んでは、飼い葉をあげてました。

 お馬さんが笑ってくれるんですよね、ヒヒヒーって歯茎を出して。ちっちゃい子から見ると怪物ぐらいに大きいんですけど、なんてかわいいんだろうって思ってた、そんな記憶があります」

 

 小学校では、女の子の友達も男の子の友達もいる、「あまり勉強もしないマイペースな子」だったという。「たとえば女の子がリカちゃん人形で遊んでいたら、自分もリカちゃん人形を買ってもらって一緒に遊んだり、男の子とは自転車に乗って、ワーッてどこまでも行ったりして。でも、一人遊びも好きで、『はいからさんが通る』のイラストを刷るおもちゃ(ポピーの『いんさつやさん』)でよく遊んでいました」

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 この頃、さとうは初めて人前に出る体験をする。「小2ぐらいからバトントワラーの習い事を始めて、夢中になりました。当時は『フラッシュダンス』が流行っていて、本当はそっちをやりたかったのに定員オーバーで入れなかったんです。でも、空いていたバトントワラーの先生がすごくきれいで優しい人だったので、はまっちゃいました。発表会があったり、市民祭りのパレードに出たり……」。そんな小学生時代を、さとうは「活発なような、活発じゃないような、不思議な感じでした」と振り返る。

革のミニスカでZELDAのライブへ

 さとうが小学校に上がる年、松田聖子が「裸足の季節」を歌ってデビューした。のちに自らも芸能界に飛び込むさとうは、当時のアイドルブームをこう懐かしむ。「やっぱりクルクルドライヤーを買ってもらって、聖子ちゃんの髪型を真似したりしていましたね。他にも松本伊代ちゃんとか、柏原芳恵さんや薬師丸ひろ子さんのコンサートに行って写真集を買ったり、ガッツリテレビっ子でした。アイドルがアイドルらしい時代でしたよね」

 意外なのが、中学時代からの展開である。“王道アイドル”に釘付けだった女の子は一転、ロックバンドにのめりこむ。「当時、バンドブームがやってきて、BOØWY(ボウイ)やALFEE(アルフィー)、米米CLUB、THE BLUE HEARTSとか、いっぱいバンドがあった中で、私はZELDAっていう女性グループが好きだったんです。それが中2、中3ぐらいの頃だったかな。お小遣いを貯めて、革のけっこうなミニスカとかはいて、ライブに行ってたんです」

 

 そんなさとうの変貌ぶりが、芸能活動への扉を開くことになる。「そしたら親戚が、ちょっと大丈夫かな珠緒ちゃん、と心配し始めて(笑)。たまたま知り合いが小さな芸能事務所をやっていたので、『なんかやれば』ということになって、漫画アクション主催のアイドルオーディション『ミスアクション』に応募してくれたんです。そこで準グランプリをいただきまして」

 そこからさとうの華々しい芸能生活が始まる……かと思いきや、このときはたった数ヶ月活動しただけで芸能界を離れている。