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実は手がかからない? “名馬”であり“迷馬”でもあったゴールドシップが若駒時にみせていた知られざる“本性”

『アイドルホース列伝 1970-2021』より #2

2021/06/25
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競馬ファンを翻弄する

 私事で恐縮だが、筆者も2回ほど痛い目に遭わされた。

 最初は3歳時の共同通信杯。この日、私はWIN5を800円ほど買っていた。当たるなど思っていなかったが、WIN4の京都記念を5番人気トレイルブレイザーが制してリーチがかかった。ラストの共同通信杯は1番人気ディープブリランテの1頭持ち。単勝1.4倍だけに安心していたが、4番手で折り合ったゴールドシップがディープブリランテをとらえてしまった。配当は何と170万円。仮にディープブリランテが勝っていれば80万円を手にしていた。

 この日、筆者はウインズ新橋にて、漫画家の蛭子能収さんに、担当する競馬雑誌内の企画・馬券チャレンジに挑戦してもらっていた。特別と重賞で指名馬が勝ちまくり共同通信杯を迎えると、震えが止まらなくなり、蛭子さんの馬券結果などどうでもよくなっていた。レース後にがっくりと肩を落とすと「最後を2頭持ちの1600円にしていればね。800円ケチって170万円損したねー」と蛭子さんに冷やかされた。正にその通りで、取材終了後に浴びるほどヤケ酒を飲んだ。後で聞いたところによれば、調教師になって初重賞を手にした須貝師は、橋口弘次郎師ら大勢の仲間とともにフグで祝い酒をしたとか。不健康な酒と健康的な酒の対比は私をさらに落ち込ませた。共同通信杯勝ちで東京コース適性があるとみたため、3カ月後の日本ダービーで「借りを返せ!」とゴールドシップから勝負すると、何とディープブリランテに敗れて5着、というオチまでついた。

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 それでもゴールドシップの走りに魅せられた筆者は、配当が2倍以上つくときに単勝を買い続けた。3歳時の有馬記念と4・5歳時の宝塚記念を勝つも、4・5歳時の有馬記念は連続3着。マイナスが3万円ほどになり「有馬記念3着馬が、得意の中山でこのメンバーを相手に負けるわけがない」と6歳初戦のAJCC(1.3倍)になけなしの10万円をブチ込むと7着…。「2倍以上」の条件を破った自己嫌悪もあり、ゴールドシップに向かって「いい加減にしてくれ!」と叫んでしまった。悪魔に翻弄されたアホな馬券ファンである。