もちろん一個一個の「切断」や「掘削」作業も難しいのですが、それ以上に大変だったのが「できてるか試せない」ことによる「心配・不安」でした。日々の作業で、膨大な数の材木を加工し、置き場に積み上げていきます。しかし、一個一個の材のオスメスが合うかくらいなら試せるのですが、本当にちゃんと組み合わさるのかは、実際にすべて組んでみるまでわかりません。複数の材の長さや、加工の位置がずれていたら、その周辺の材のすべてが致命的に使えなくなる可能性が……。
結果としてすべての材に大きな間違いはなかったのですが、合ってるような、合ってないような、何とも中途半端で不安な気持ちのまま1年近く作業を進めていたのは辛かった……。
高所恐怖症にも待ち受ける屋根工事
体力的に辛かったのは、屋根工事でした。もともと高所恐怖症気味の私。足場が斜めで高所にある屋根工事は、そこにいるだけで体力を削られます。おまけに日差しからも、風からも、体を守ってくれるものはありません。
木造住宅では、骨組みの上に垂木と呼ばれる材木を斜めにかけ、その上に板を張って、屋根の下地を作ります。これらの材はしっかりと取り付けないと、台風の時に屋根が飛んで行って大変です。
下地ができたら、その上に防水用のシートを張るのですが、これが鬼門。防水シートはタッカーと呼ばれる、ホッチキスの親分みたいな道具で留め付けます。我が家の屋根は、端から端まで約13m。ごわごわで破れやすい防水シートを長い距離に張り付けるには注意が必要で、ちょっとでも気をぬくと、シワがよったり裂けたりするのです。
2日がかりで、屋根全体を覆うことに成功したのですが、結構なシワやヨレができていました。これが後々の悲劇の原因になるのですが、この時点ではまだ気づいていません。
作業したのは春先。季節の変わり目、風の強い時期です。地上で作業中、上でボファという音がするので慌てて上がると、タッカーの針が抜け風にたなびいているのを発見。あわてて留め直して……なんてこともしばしば。
そしてある朝、現場に行ってみると、そこには遠く隣の畑に墜落した我が家の防水シートの姿が。屋根の上の綺麗に剥がれたあとが生々しかったのを覚えています。