文春オンライン

「70歳の美味しい酒のためにはもう喧嘩売らないですよ」 ‟肩書にこだわらない”品川ヒロシが仕事のない時期に得た‟教訓”

品川ヒロシさんインタビュー#2

2021/06/23
note

僕は毎日朝起きて一歩一歩歩いているだけ

──その潔さが根本にあるからこそ、行く先々で作るものそれぞれが、それぞれに伝えたい人に伝わっているんだな、と感じます。

 

品川 たまに「おまえ、何がやりたいんだよ」って言う人いるじゃないですか。いつも思うんですよ、「なんでそんな俺のやりたいことに興味があるんだ?」って。「どこ進んでんだよ」。ん?  なんで俺がどっちに進むか興味あるんだ? ホントに? そんなの、自分の行き先だけ見とけばいいじゃんって思っちゃう。そもそも人生って、どっち進むか決まっている奴なんかいます? 僕は毎日朝起きて一歩一歩歩いているだけで、あらかじめどっちに進むかなんて決まってないですけどね。必死で足を出してるだけ。だから、誰かがどこに向かって歩いていようが僕は興味ない。それが潔いか分かんないですけど……あ、携帯電話は一回、捨てましたね(笑)。

人間関係にヘンに寄りかからない

──人間関係を自らリセットできるんですね。

ADVERTISEMENT

品川 でもみんなだって一生同じ「誰か」たちと付き合うとかって、思ってないでしょ? 今もこの舞台『池袋ウエストゲートパーク』を作るという中でもね、みんなが友情を感じて「うわ~」っとラストまでいくじゃないですか。で、終わったら「それじゃ、また会おうね、解散」っていうのが好き。だけどもし何かあった時にはまたみんなが集まってきて、「前回会った時より大きくなったよね」みたいなのがいいと思うんです。だからヘンに寄りかからないし、粘着質に「なんでこんな時連絡くれないんだよ」とかしたくないじゃん。「期待はしないけど感謝したい」っていうのは、自分がちゃんと頑張っていればまた会える時はあるし、相手も頑張っていれば俺が会いたいと思う時にやって来るっていうこと。それが一番いい人間関係かなと思っています。

 

 若い頃は別ですよ。キレたし短気だったし、今回舞台に出てもらってるダイノジ大地さんにも頭突きして鼻血出させたことありますから(笑)。でも今こうやって仲良くやってる。25年後の平穏。20代30代、ギスギスして喧嘩して、「お前感じ悪いぞ」って言いつつ50歳ぐらいに「あの時のおまえ、ムカついたな~」ってキャッキャッして酒飲む。いいですよね。でも今喧嘩して、20年後に親友になります? 70歳ですよ! 70歳の思い出話のため、20年後の美味しい酒のためにはもう喧嘩売らないですよ。そんなパワーはないし、いらない(笑)。