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source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書, ヘルス, 人生相談

観察対象第二号

【結論】このふたりは幸せなカップルではない。男は自分の地位について心配するばかりで、女を相手にしている時間もない。また大学教育を受けているにもかかわらず、セックスの手順についても前戯についても無知だ。

 わが観察実験の第一号としては、まことにお粗末な結果になった……。いずれ事態は好転すると確信している。

 しかし、二組めのカップルの場合もジェラルド・フースにとって事態は好転しなかった。このカップルについて、フースは短い記述であっさりすませている。

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1966年11月25日 観察対象第二号 

 【外見】黒人男性、30歳前後、職業不詳、身長180センチ、体重84キロ。連れの女性は30歳前後、身長163センチ、体重54キロ、職業不詳。

 【行動】午後1時、この黒人男性と黒人女性のカップルに4号室を貸した。入室後にふたりは、男が友人から金を借りようとしたが、うまく借りられなかった件を話しあっていた。とにかく会話は一から十まで金がらみ——男があるところから手に入れられる金、また別のところから入手できる金……。男は安物のバーボンの一パイント瓶をもちこんでいて、ふたりは水割りにして飲んだ。そのあとふたりは15分にわたって、相手の服を脱がそうとしながらベッド上を転げまわっていた。このあいだ会話はいっさいなかった。ようやくふたりとも全裸になると、男はベッドのシーツと毛布と上がけを引きあげ、鼻まで隠れるほど体をすっぽり覆ってしまった。ついで男は即座に女に挿入、数分ばかり抽送をつづけるうち、覆いがずり落ちて男の尻があらわになったが、男はそこで性交をいったん中断して、覆いを頭まで引っぱりあげなおした。体を覆わずにいられないのだ。オーガズムののちも、ふたりは体を清めなかった。女がバスルームへ行くことはなく、男はまた金の話をしはじめた。ふたりは服を着ると、午後3時にはそそくさと去っていった。

1966年11月26日 観察対象第三号

【外見】白人男性、50歳前後、身長167センチ、体重65キロ、高学歴、髪や肌の手入れも行き届き、服装もきちんとしている。その妻、50歳前後、身長154センチ、体重58キロ、髪や肌の手入れも行き届き、服装もきちんとしている。高学歴、黒髪に白いものがちらほら。ドイツ系、感謝祭の休暇シーズンを利用し、オーロラ在住の息子とその結婚相手に会いにやってきたとのこと。