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中年カップルの夜

【行動】このすばらしい外見のカップルには、12号室を2泊3日で貸した。午後4時のチェックイン後、わたしは数回にわたってふたりを観察した。ふたりは息子の妻との初対面にそなえて準備に忙しくしていたが、会話のはしばしから察するに、ふたりとも嫁のことを快く思っていないようだった。ふたりがモーテルに帰ってきたのは夜中の12時で、どちらも義理の娘をめぐるあれこれに腹立ちがおさまっておらず、自分たちの感情を息子に伝えるべきかどうかについて、そのときもまだ議論をつづけていた。男は、息子の妻がたぶん“床上手”で、だから息子が結婚したのだろう、といった。女(男の妻)は着ていた服を脱ぎ、ブラジャーをまわしてホックを前にしてからはずし、靴を脱ぎ、靴の内側に脱臭スプレーらしきものを吹きかけた。ついで妻は風呂の用意をして、シンクで髪を洗った。髪をタオルで包んでからバスタブにはいって体を洗い、膝立ちになって性器周辺を洗った。風呂からあがると、妻は一時間かけて髪をカーラーに巻きつけたり、おめかしをしたりしていた。これが50歳の女だとは! この女が生涯どれだけの時間を無駄にしてきたことか。このころには女の夫は寝入ってしまい、今夜はセックスはどう見てもなさそうで……。

 翌朝の午前9時、妻が夫に最後までオーラルセックスをほどこしたばかりか、妻の頬を精液が伝い落ちている場面まで観察できた。さらに妻は夫の助けをいっさい借りることなく、完全なオーガズムに達していた。

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 そのあと二日このふたりを観察し、別の機会にふたりが交接とオーラルセックスを組み合わせて楽しんでいる場面を目撃した。

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【結論】高学歴で中流の上の階層に属するこの中年カップルは、実に充実した性生活を送っている。

【後編に続く】客のセックスを覗き見るモーテル経営者が思いついた“実験”「これこそ、わたしが愛してやまない瞬間だ」

覗くモーテル 観察日誌 (文春文庫)

Gay Talese, ,ゲイ・タリーズ, ,白石朗,

文藝春秋

2020年1月4日 発売