漫画や小説などを映画化した作品で、多かれ少なかれ生じてしまう問題というか、気になるのが原作との乖離。
1902年に出版され、現在までに全世界で2億5千万部を売り上げているビアトリクス・ポターの児童書を実写化した『ピーターラビット』(2018)も、そうした気になる一本のうちに数えられているのは間違いない。
戦闘シーンは「戦争映画を参考にした」と、監督
イギリスの湖水地方に暮らす、ウサギのピーター。ある日、かつて父親を殺したうえにパイにして食べてしまった因縁の相手マグレガーが心臓発作で亡くなってしまう。野菜目当てに彼の家の庭に入り込んでは争っていたピーターは、仲間たちとマグレガー邸を乗っ取ってどんちゃん騒ぎを始める。
だが、新たな家主としてマグレガーの親戚トーマス(ドーナル・グリーソン)が現れ、動物嫌いな彼と激しい戦いを繰り広げることに。しかも、マグレガー邸の隣に住み、ピーターが亡き母の代わりとして慕う“ウサギの味方”・ビア(ローズ・バーン)がトーマスと恋仲になったことで、憎しみと戦いは激しさを増していく。
オープニングで“ブルーの上着にズボンはナシ!”とツッコミを入れる形で紹介されるピーターは、ひたすらしゃべくり倒すタイプのキャラクターだ。全体のノリも“人間VSウサギ”を主軸にしたコメディになっていて、あの原作の牧歌的で可愛い雰囲気は皆無。原作シリーズのファンなら呆気にとられてもしかたがないと思う。
しかし、それはそれとしてアクション映画が好きな者からすると実に楽しめる作品に仕上がっている。監督を務めたウィル・グラックは、“『バンビ』(42)よりも『プライベート・ライアン』(98)のように展開”“野菜や果物が爆発するなかで繰り広げられる”といった、人間とウサギの戦いを描くにあたってのビジョンを抱いており、実際に制作にあたって「戦争映画『プライベート・ライアン』の戦闘シーンを参考にした」と語っている。