声優のあさのますみさんは、青春を共に過ごした大切な友人の死という「喪失」の経験を、著書『逝ってしまった君へ』(小学館)として上梓した。後悔や自責の念などといった感情に苛まれながらも、この経験を通じて「ひとつ、とても大きなものを得た」と同書であさのさんは記している。
つらい出来事をどのようにして受け止められるようになったのか、あさのさんに聞いた。(前後編の前編/後編を読む)
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20年以上仲良くしていた友人が、自死を選んだ
――2019年1月に、大学時代からの友人を亡くしたあさのさん。新刊『逝ってしまった君へ』は「君」に語りかける随筆集です。「君」とはどんな関係だったのでしょうか?
あさのますみ(以下、あさの)彼は長年の友人です。大学は違いましたが、共通の友人のバンド仲間で、18歳の時に知り合いました。知り合ってすぐに1年間付き合って、別れたのですが、その後も「お兄さん」のような気持ちで、仲良くしていました。
――知り合ってから20年以上経って、彼は自死を選んだと。話を聞いた時の最初の気持ちを伺ってもいいでしょうか。
あさの 訃報が届いたのは、2019年1月13日でした。私はタクシーに乗って、自宅に帰るところでした。彼と知り合うきっかけをくれた友人から「あいつ、死んじゃったって」というLINEが来たんです。あまりにも予想外すぎて、びっくりすることすらできなかったですね。「えっ、何、えっ」という感じで。頭が真っ白になりました。
彼とは2人で食事に行くこともありましたし、LINEもしていましたが、自分で死を選ぶようなことがあると全く思っていませんでした。死の1ヶ月前に彼は鬱だと診断されていたそうなのですが、そのことも知らず……。
別に、友人から嘘をつかれていると思ったわけじゃないんですが、しばらくはふわふわして感じられて。時間が経ってから、じわじわと現実が自分の中に浸透してきました。
――本当なんだ、と思えたのはいつでしたか。
あさの 彼が残していた遺書を読ませてもらった時ですね。彼、何人かの友達に個別のメッセージを書いていて。その中に私のものもあったんです。訃報を聞いた次の日に、第一発見者の友人が時間を作ってくれて、内容を見せてくれました。
まだ彼が発見されて間もないタイミングだったので、遺書本体は警察が保管していて、私が見せられたのは、友人が遺書を撮影した写真でした。手書きで、5行ほどのメッセージが書いてありました。「俺の心の中で、ますみはずっと大きな存在だよ」という言葉を読んで、彼がそんなふうに思ってくれていたことを初めて知って……。
遺書を読んで、友人から発見時の状況を聞いて、「あ、本当に死んじゃったんだな」と実感がわきました。