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 身近な人が鬱を患った後に死を選ぶ経験は初めてだったので、少しでも理解したくて、鬱になった方の本をいろいろ読んだり、過去に心の病気を経験した人に話を聞かせてもらいました。気持ちに影響が出るだけではなく、体に症状が出ることなども、それで知りました。

友人の死は、他人にうまく重さを説明できない

――それまで、あさのさんに「喪失」の経験はありましたか?

あさの 一緒に暮らしていた猫が突然死したことがあります。本当に原因がわからない突然死というのがあるらしいんですね。

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 答えがないことを受け入れるのは、地獄のような苦しみでした。あまりにも気持ちが不安定で、誰かからどんな言葉をかけられても、自分の感情を抑えられなくなりそうだから、口に出せなかったですね。「動物の死」って、他人には重さをうまく説明できなくて。

 彼の死もそうでした。自死を聞いた後も仕事を続けていましたが、周りには言えませんでした。さすがに自分の夫や親が亡くなったという話なら、仕事場に連絡が入って、周りもケアをしてくれるじゃないですか。ただ、友達となると、周りも正確な関係性がわからない。「どのくらいの友達なの?」となる。

 

 関係性をあれこれ想像させてしまうのが嫌だったし、正しく説明できるかも自信がなくて。みんな、彼のことを知らないわけですし。だから黙って仕事をするのが一番楽かなと思ってそうしていました。それはそれで辛かったですね。

――どうやって日常に耐えたんでしょうか。

あさの 告別式があるから、と自分を励ましていました。変な話ですけど「待ち遠しい」という思いで。だって、彼を知っている人たちに会って、たくさん彼のことを話せますから。

 告別式では、彼のお姉様が彼のスマホを持ってきてくださいました。その中に、彼が自分の気持ちを書き連ねたメモアプリがありました。いろいろなことが書いてありましたが、そのうちのひとつに「自分には友達がいない」ってあって。

 でも、彼が亡くなった後って、告別式とは別に、90人以上有志が集まって、お別れ会を開催したんですよ。それくらいいろいろな人が彼のことを考えていても、それが見えなくなってしまう病気が鬱なんだと、とても恐ろしく思いました。

【続きを読む】自死した友人の残したメモに目を通して驚いた…声優・あさのますみが語る、「遺品整理」を手伝う意味

※厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が掲載している、悩みを抱えた時の相談先はこちらから。

写真=佐藤亘/文藝春秋

逝ってしまった君へ

あさの ますみ

小学館

2021年6月30日 発売

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