1ページ目から読む
2/3ページ目

――メッセージからも伝わってきますが、すごく優しい方だったんですね。

あさの 物事や友達のいいところにすぐ気づいて教えてくれる、素敵な人でした。いつも人のことを気にかけていて。私の家庭は裕福ではなく、今でもラジオなどで貧乏エピソードをネタにすることがあるのですが、大学も奨学金で入ったんです。でも、その奨学金も、親に使い込まれてしまうような状態で。

 彼には付き合う前に私の家の話をしたんですが、そこからずっと、私と家の関係を気にかけてくれていました。彼自身も、10代の頃にお父様を亡くしていて、何不自由なく育ったわけではなかったんですね。彼自身の気持ちに重ねて、私を心配してくれていた部分もあるかもしれません。

ADVERTISEMENT

「私は気づける人間じゃなかった」…自分への不信感

――交際時から20年以上交流がある中で、彼が落ち込むところを見たことはなかったんでしょうか?

あさの なかった、と思います。内にこもるようなところがあるとも思っていませんでした。なので、こういう形でお別れすると、本当に予想してなかったです。ただ、彼の死後、告別式や遺品整理などで友人と集まったら「学生の頃から、繊細で内にこもるところがあった」と言う人もいて。

 そういえば私と別れる時も、小さな喧嘩をした後に「一人になりたい」と言われて、別れることになったのを思い出しました。私にとっては人生の中でも本当につらい出来事の一つだったため、かえって忘れようとしていたのかもしれないです。

 

 その後友人関係が続く中で、交際時のことを彼と話すことはありませんでした。友人からも「あなたと別れたのは、他に好きな人ができたのを正直に言わなかっただけだよ」と分析されて、そういうふうに解釈していたかもしれません。彼の死後、いろいろな友人と彼の話をして、私には見えなかったことがあったんだなと気づきました。

――訃報を聞いた後、あさのさん自身が心折れそうになりませんでしたか。

あさの 明け方目が覚めて涙が出てくるとか、そういうことはありました。友人の中には、彼についての話をする中で「自分も実は鬱だったことがある」と明かしてくれた人もいたんですが、私自身は、全く経験がなく。

 ふだんだったら「きっと私は心が強いほうなんだな」と思うだけですが、彼の訃報の直後は「だから私には何も言ってくれなかったのかな」とか「私はそういうことに気付ける人間じゃなかったんだな」と落ち込んでいました。自分に対して、不信感のようなものがわいてたというか。