昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/06/30

「家」「個人」「階級」を知る6冊

【1】原著メイン古代法―日本立法資料全集 別巻 482

 

ヘンリー・サムナー・メイン 信山社 41,800円

もともと家族にその起源を有するような、権利と義務という形態の相互関係に代わって、新たに人々の間を結び付ける役割。それは契約なのである──「“身分”から“契約”へ」を説いた名著。東大の博士課程入試の面接で、「読んだことがない」と私が答えたときの試験官の憐れむような顔を忘れることができない。もうこりゃ絶対に落ちたわと思ったが、なんとか合格させてもらった。そこで図書館に飛び込んで真っ先に読んだのがこの本。

【2】家族法

 

大村敦志 有斐閣 3,960円

大村敦志先生の『家族法』の教科書は、洒脱な文章と相まって読み物として通して読んでも面白い。戦前の明治民法から戦後の大改正を経ての現行民法の経緯を含めて、家族法全体の見取り図を学べる。民法典の家族像から始めて、そこからはみ出す精子提供や同性カップルなどの現代的な問題まで、個別の議論に飽き足らず、この問題は家族法全体のどこに位置するのかを知りたい方にお勧め。

【3】結婚の条件

 

小倉千加子 朝日文庫 484円

女性にとっての結婚が、階級上昇の手段であったり、または階級維持のための妥協策であったり、いまだに「身分」的な要素があることを鋭く指摘する。上野千鶴子さんとの対談『ザ・フェミニズム』(ちくま文庫)を読んだとき、女性すべてを切り捨てまいとする小倉さんの温かさと、それゆえ自分が傷ついてしまう繊細さに触れた気がして、それ以来、会ったことがないこの方に私淑しています。

【4】選択的夫婦別氏制─これまでとこれから

 

滝沢聿代 三省堂 4,400円

「夫婦同氏」なんて女性差別だ、許し難しというリベラル派の本と、家族の絆の名の下に「家」を温存しようとする保守派の本の両極の間で、バランスが取れた良書。家族のあり方にはその国独自の経緯がある。だから「海外では」という出羽守的な議論には、特に乗りがたい。その点、外国法紹介の部分もその国の家族のあり方を包括的に描いていてフェアである。

【5】女子会2.0

 

「ジレンマ+」編集部・編 NHK出版 1,430円

千田有紀さん、水無田気流さん、西森路代さん、石崎裕子さん、白河桃子さんによる、女性のモヤモヤをめぐる論考。「恋愛」の先に「結婚」を捉える「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」が近代の産物であることを語るコラムが秀逸。この本で一番面白いのは黒一点・古市憲寿さんが加わった座談会である。それまでキレッキレだった女たちの微妙な変化を感じたのは私だけだろうか。

【6】カラーパープル

 

アリス・ウォーカー 集英社文庫 781円

養父に、そして夫に虐げられ続ける黒人女性が自尊心を手に入れるまでの物語。“男性”と“女性”という階級社会を説くそれ以前のフェミニズムに「“白人”と“黒人”という界層を無視できるのは、あなたが白人女性という特権階級に属するからよ」という鋭い刃を突きつけたブラック・フェミニズムの名著。大学時代に読み、女に生まれて不幸なんて思っていた私は完全に甘ちゃんだったと衝撃を受けた作品。

この記事の写真(11枚)

+全表示

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春WOMANをフォロー