「当初から公費の支出として適当なのかどうかという議論はあったと思います」と野田課長は想像する。さすがに全話出し続けるのは難しかった。第6話については、制作費の1000万円をふるさと納税で調達しようとしたが、92万円しか集まらず、結局市費で賄った。
「以後の制作費は、市民らで実行委員会を結成してもらい、スポンサーを募るなどしようと考えたのですが、そうした途端に資金計画が立たなくなってしまいました」と野田課長はため息をつく。
肝心の“聖地巡礼”は成功したのか?
アニメファンの投票を基に一般社団法人アニメツーリズム協会が選ぶ「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」には3年連続で選ばれているが、誘客効果もなかなか実感できない状態にある。初代朝宗と政宗の「等身大」フィギュアを置くなどしてアピールしているものの、「ひと頃は写真を撮影に来る人もいたけれど、最近は見ませんね」と、設置場所の「道の駅」や「まちの駅」では聞いた。新型コロナウイルス流行の影響もあるのかもしれない。
なぜなのか。就任2年目の野田課長は「後から担当になった私の分析」と断りつつも、様々な原因を挙げる。
「アニメとしては男の子向けに作られていません。大ヒットした『鬼滅の刃』のようにやられたり、やったりという白熱の戦闘シーンが続くわけではなく、ご先祖様と合体した第17代政宗はすごく強くなるので、敵を“瞬殺”してしまいます」
市民の間での周知も今一つで、「上映会を催したあとは、YouTubeとニコニコ動画での配信です。学校で上映するなど広く市民に観てもらう機会が作れませんでした。実行委員会もアニメ好きな人の集まりだったので、市内の人材が広く関与する形になっていなかった。市役所の内部でも、私がいた地域振興課などは地域おこしに絡めた連携が必要だったのでしょうが、全庁的な取り組みになっていたわけではありません。例えば、国史跡の指定も後からになりました」と反省を込めて話す。
「行政が一生懸命やっても……」
“最終”となった第6話の完成上映会は2018年2月。第11代持宗から第14代稙宗(たねむね)までが本城とした梁川城址など「伊達氏梁川遺跡群」が国指定史跡になったのは、それから1年半以上あとの2019年10月である。
同年9月に市内で催された「伊達なアニメフェス2019」には、声優のKENNさん(第5代宗綱の役)とブリドカットさん(愛姫の役)を招いたが、政宗のコスプレで登場した須田博行・伊達市長は『政宗ダテニクル』ではなく、コンピュータゲーム『戦国BASARA2』の衣装だった。須田市長は、『政宗ダテニクル』の制作を決めた前市長の仁志田氏を前年、選挙で破って就任していた。
観光地については、市がなかなか手を出せない理由もあったようだ。野田課長は「民有地が多く、草ボウボウになっているような場所に聖地巡礼ツアーを仕掛けても、印象には残らないというか、来てもらうのさえ気の毒というか……。来てもらうための素地をしっかり固めたうえで、最後の周知の部分でアニメを仕掛ける形にできればよかったのでしょう。もう一度、やらせてもらえるなら、全く違った形で展開できると思います。私達としてはいろんな面で勉強になりました」。