「いや、別にそんなに楽しみじゃないです……。」
新国立競技場の周りでもやはりオリンピックの準備で交通規制が敷かれていた。交通規制の説明地図を見ていた女性に話を聞いた。
「ここまで準備すればオリンピックはやるんでしょうね。私はオリンピックをやってほしいとも、やってほしくないとも思わないです。やったらやったで感染拡大の不安もありますけど、そもそも盛り上がってないという実感です。コロナじゃなかったらまた違うんでしょうけど」
家族や知人との会話でもオリンピックの話題はまったくでてこないという。女性はオリンピック開催にはあまり興味はないが、会場がどうなっているか気になって見に来たとも話してくれた。
スタジアムの近くには日本オリンピックミュージアムがあり、ニュースでよく見る五輪のモニュメントが設置されている。平日でもモニュメント前で写真をとる人で賑わっている。
写真を撮っている人ならオリンピック開催を楽しみにしているだろう、と都内に住む男性に話を聞いてみた。
「いや、別にそんなに楽しみじゃないです……。開催されると人で混むので今のうちに見にきましたが、規制がかかっていて会場も近くで見られないんですねぇ」
ということであった。
またミュージアム前も平日にしてはなんだか人が多いなと感じたのだが、近くの日本青年館ホールでジャニーズ主演のミュージカルが上演されているので、それを観に来た若い女子がついでに五輪モニュメントにも寄っているだけであった。
会場近くにいる人達に話をざっと聞いても、オリンピック開催を心待ちにしている人はいなかった。それでもなんとなく興味はあるので会場を見に来たという感触である。盛り上がっている実感はわかない。世論調査でオリンピックの延期や中止を求める意見が半数となっていたが、開催まで1ヶ月をきった今の感覚としては、どうせやるんでしょう、という諦めの空気が大半を占めているといえよう。
そもそも準備段階からケチが付きまくった上に政府の行き当たりばったりのコロナ対策、IOCやオリンピック関連業者の利権構造がおおっぴらになって、盛り上がりましょうと言われても白けるだけである。おまけに“世界一安上がりな五輪”と謳っていたのに、蓋をあければ“世界一金がかかった五輪”になっている。この損失はどうせ税金に跳ね返ってくると思うと素直に開催に喜べない。せめて、オリンピック終了後に再び緊急事態宣言が発令されないことを祈るしかない。
写真=八尋伸