6月28日の午後、千葉県八街(やちまた)市で、トラックが下校中の小学生5人の列に突っ込み児童2人が死亡した事故。危険運転致死傷罪で千葉地検に送致された運転手の梅沢洋容疑者(60)の呼気からは、基準値以上のアルコールが検出された。

南武の”不都合な真実”とは…?

 業界関係者からは「勤務前のアルコール検査は常識」といった意見も聞こえるが、梅沢容疑者の勤務先である南武運送の親会社「南武」の担当者は30日「運転手の飲酒の検査はしていなかった。私の覚えている限りではこの事件の他に現場で人が死亡したような事故はありません」と説明した。

30日午前、送検された梅沢容疑者 撮影・宮﨑慎之輔 ©文藝春秋

 しかし、関係者の証言から浮かび上がったのは、安全管理を杜撰にしてきた南武の“不都合な真実”だった――。実は、南武は7年前にも死亡事故を起こしていたというのだ。同社をよく知る人物が語る。

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「2014年8月には『南武』の前身である『南武建設』が現場を管理していた東京都江戸川区のマンション建設現場で死亡事故が起きています。40kg以上の鉄筋が220本も倒れ、従業員3人が下敷きになりました。30歳だった男性と、29歳のキューバ人男性の2人が死亡し、40代の男性が重傷を負う大事故でした。普通なら建築用の鉄柱は完成してから現場に届けるのですが、トラックの積み荷を軽くするために鉄柱の中身が空洞のまま運び、それを現場で完成させる作業中に鉄柱が倒れたことが原因です。事故後は社内の空気がかなりどんよりし、会長や社長と会っても事件について聞ける空気ではなかったようです。

事故現場の道路。ガードレールなどはない 撮影・宮崎慎之輔 ©文藝春秋

 当然、現場で人が死ぬような会社には皆頼みたくないから、その後、南武建設の仕事は激減しました。この事故がきっかけで『南武建設』は、現在の名前である『南武』に名前を変えたようです。親会社とはいっても『南武』と南武運送は日ごろからほぼ業務内容も一体化していて、南武運送の代表取締役は『南武』の会長が務めています」

 実は、南武には長い「改名」の歴史がある。

 1992年に「知念興業」から「南武建設」へ。そして、前述の事故後の2015年に「南武建設」から「南武」に再び社名を変えた。