西武池袋線江古田駅といえば、日大芸術学部の最寄り駅である。かつて江古田駅南口には「そば処むさしの」という立ち喰いそば屋があったのだが、2012年1月に閉店。その後「華江戸」が短期間営業していたが2013年に閉店。それ以来、江古田は立ち喰いそば空白の駅となっていた。
そんな江古田に2020年12月、1軒の立ち喰いそば屋が開店した。「のじろう」である。
この「のじろう」、実は「肉そば」がうまい店と江古田住民から評判になっているという。そこで、6月最後の土曜日に訪問してみることにした。
「肉そば」の歴史
その前に、「肉そば」について少し予習をしておこうと思う。江戸時代、肉を食べることは御法度になっていたのだが、それは建て前の話で意外と食べられていたようだ。雉や鴨、鶏はいい出汁がとれるので、鰹節やにぼしなどの出汁が手に入らない内陸地域で食べる習慣があったという。山形の「肉そば」にはそんな背景があると思う。江戸時代後期のそば屋には「鴨南蛮そば」などのお品書きがすでにあったという。
ただ、牛肉や豚肉を使った「肉そば・うどん」のルーツとなると定かではない。一般的には、戦後、冷蔵庫の普及や食肉の流通の拡大によって、全国各地で「肉そば・うどん」が販売されるようになったということになると思う。もちろん、関西地方で「肉うどん」といえば牛肉、関東で「肉そば」といえば「豚肉」が使われることが多い。
9種類に分類できる、さまざまな「肉そば」
さて、関東、とくに東京の豚肉を使った「肉そば」は大衆そば屋を中心に大きく発展し、百花繚乱的人気メニューとなっている。その種類はさまざまで、現在、下記のように9種類に分類できると考えている。
関東(主に東京)の肉そばの分類
生麺系
豚コマ・バラ肉とネギをつゆと炊き上げ+生麺(一般的街そば店など)
大量の豚バラ肉+ネギ+極太不揃い生麺+通常のつゆ(角萬など)
大量の豚バラ肉+ネギ+海苔+ゴワゴワ極太生麺+甘め返し強めのつゆ(港屋など)
大きな豚バラ肉+ネギ+手打ち生麺+通常のつゆ(うちば)
薄切り豚バラ肉+ネギ+海苔+細生麺+通常のつゆ(まる美など)
豚コマ肉とネギの煮込+細生麺+通常のつゆ(彩彩など)
茹麺系
大きな豚バラ肉+ネギ+細茹麺+濃いつゆ(豊しまなど)
薄切り豚バラ肉+ネギ+太茹麺+あっさりつゆ(南天など)
豚コマ肉の甘辛煮+ネギ+細茹麺+通常のつゆ(瓢箪、ファミリーなど)
中でも、浅草などにある「角萬」は老舗的存在で、大量の豚バラ肉とネギに極太不揃い生麺を使った独特の味で「冷やし肉南蛮そば」は人気の定番である。
また、虎ノ門にあった「港屋」は「肉そば」の概念を変えたといわれている。大量の豚バラ肉をゴワゴワ極太生麺の上にどっさりのせて、返しが強い甘めのつゆにつけて食べる。インスパイアー系がたくさん誕生したことでも知られている。
椎名町にある「南天」の「肉そば」は、大量の豚バラ肉とネギが太めの茹麺にのっていて、少な目のあっさりしたつゆが食欲をそそる。他にも飯田橋にある「豊しま」の大きな厚めのバラ肉がのったタイプなどがある。
さて、前置きがすごく長くなってしまったが、「のじろう」の「肉そば」はどんなタイプだろうか。期待を込めて江古田駅改札を出て、北口方向へ階段を下りて行く。お店は改札からほぼ1分。日大芸術学部の近くで好立地である。店も目立つ外観である。