オーナーには作りたかった「肉そば」の味があった
しかし、「のじろう」はどうやってこの味にたどりついたのだろうか。三津田店長に聞いてみるとなかなか面白い答えが返ってきた。
「店のオーナーは飲食店を多数経営していて、立ち喰いそばが好きだったんです。それで、もし立ち喰いそば屋をやるのなら、肉そばを出したいと常々考えていました。作りたかった味があったんです」
そのオーナーさんが思い描いていた「肉そば」は次のような味だった。
●うまみや甘みのある良質な豚バラ肉をガッツリ使った野趣あふれるタイプ
●麺もつゆもそれに負けないしっかりした味
●大衆的でファストフードにピッタリな味と提供方法
●ワンコインでお腹いっぱいになる味
そこで、オープン前に三津田店長とオーナーさんは二人で人気店の「肉そば」をずいぶん食べに行ったそうである。「もちろん、どこの味もうまかったんです。しかし、自分たちが思い描いていた肉そばの味とは出会うことはなかった」という。それなら、二人で「他の店にない独自の路線の味を商品として昇華させて、ワンコインで提供していこう」と決意を新たにしたという。
「のじろう」の「肉そば」は、しっかりしたそばつゆをたっぷりと使っている点で、あっさりつゆの「南天」とは異なっている。コシのある太めの茹麺も十分主張しており、とにかく全体のバランスがよい。つまり、「のじろう」の「肉そば」は、上の分類に属さない新しい(10)番目の分類(薄切り豚バラ肉+太茹麺+しっかりした正統派のつゆ)ということになると思う。
「のじろう」のオーナー「野口次郎」さん登場
そんな話をしていたら、店のトラックが食材の配達にやってきた。登場したのはなんと店のオーナーである野口次郎さんだった。つまり、「のじろう」という店名の由来は、オーナーの昔からのニックネームだったというわけである。
野口さんはさすが食のプロの方で、新しい食材の調達や提供する味のことに腐心しているようで、お店の味の感想を矢継ぎ早に質問して来た。
「肉そばだけでなく、天ぷらのクオリティをどう維持するかも大切です。うちはワンコインでありながら、とろろは国産の長芋を使用して、食材も安心して食べていただけるように心がけています」という。お客さん目線のその姿勢には頭が下がる。