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「厚遇した事実もない」は上司が伝えた内容

 だが、赤木俊夫さんは公文書改ざんの当事者ではあるが、国有地取引の当事者ではない。俊夫さんが担当部署に異動してきたのは国有地売却の翌月だから、実際の交渉には関わっていない。取引の経緯を直接知らないのである。だから「厚遇した事実もない」と書いたのは、売買交渉に携わった上司の池田靖統括国有財産管理官(当時)が俊夫さんに伝えた内容だろう。雅子さんは当時を振り返る。

「夫は池田さんのことを信頼していました。森友問題が発覚した当初『取引は正当だと池田さんに聞いている』と話していました。だからあのように書いたんでしょう」

 しかし時がたつにつれ、俊夫さんは池田さんへの不信感を募らせていく。値引きの理由は地中深くにあるゴミとされたが、その存在は誰も確認していない。その年の人事異動で俊夫さんだけが担当の職場に残され、池田さんや他の職員はみな異動していなくなった。そして異動後、問題の国有地取引に関する資料が職場から消えていたという。

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「むっちゃ落ち込んでました。一人だけポツンと残されて、資料はすべて処分されて……夫に取引の真相を知られたくなかったんですよね。あんまりです」

安倍晋三前首相のツイートを読む赤木雅子さん

 その直後、俊夫さんはうつ病と診断され休職。職場に戻ることはできなかった。休職中、池田さんへの不満を漏らす。

「池田さんは仕事が雑や。ちゃんと(国有地を)売っていたらこんなことにならんかった。大学に売っとったらよかったんや」

 大学とは、国有地の隣にある大阪音楽大学のこと。森友学園より先にこの土地の購入を希望し、7億円以上の額を提示したとされるが、近畿財務局は売らなかった。それを森友学園には1億3400万円で売った。これが厚遇でなくて何だろう。

池田さんも「値引きに根拠が足りないこと」を認めている

 そもそも売買の当事者である池田さん自身が、8億円以上の値引きに根拠が足りないことを、雅子さんに認めている。森友学園との交渉でも「(籠池)理事長がおっしゃるゼロ円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を今やっています」と発言している。まさに厚遇そのものだ。

「厚遇した事実もない」と書かれていても、それは俊夫さんの実体験ではなく、土地を売った池田さんの“言い訳”にすぎない。だからマスコミは「厚遇はなかった」とは報じない。当時の首相ならこうしたいきさつをわかっていて当然だが、公式ツイッターでは「握り潰されている」と非難する。