「自分のスケールを広げなきゃ」ともがいた時期も
――言われてみれば、女子高生たちの日常を描いた『女の園の星』では、生徒たちが学級日誌で繰り広げる「絵しりとり」に担任の星先生が翻弄されたり、星先生の中学時代の卒業アルバムが都市伝説を生んだりするなど、華やかなイベントや事件ではない「普通の日常」がひたすら描かれています。
和山 「半径5メートル以内のことは描くな」というアドバイスを別の担当編集さんから受けたこともあり、「もうちょっと自分のスケールを広げなきゃ」ともがいていた時期もあったんですけど、全然描けなかったんです。そんな時、バカリズムさんの『架空OL日記』というドラマを見て、主人公の半径3メートル以内の日常を面白く切り取っているのがすごく刺さりました。
実際に生活しているうえではそんなに意識しませんが、後から考えると何がそんなにおかしかったんだろうということで笑ってしまうことってありますよね。なんてことのない日常を面白おかしく描いていくことこそ私の描きたいものだと改めて気付かされて、普通の日常に焦点を当てるようになりました。
――デビュー作の『夢中さ、きみに。』では男子高校生を、『女の園の星』では女子校を舞台に描かれています。あえて共学にしないというのは、ご自身でテーマがあるのでしょうか。
和山 『夢中さ、きみに。』で男の子をたくさん描いたので、次は女の子を描きたかったというのもあります。あとは、共学だと、潜在的にお互いに異性を意識して、勝手にジャッジしあう残酷さというか怖さがあると思っています。実際に私も共学でそんな嫌な空気を感じたこともあり、そういう理不尽な部分や不公平感が生まれないよう同性だけの世界を描いてしまうのは無意識にあるかもしれません。もちろん、同性だけの世界にも嫉妬やイジメはありますが、それは私の漫画を好きで読んでくださる読者は求めてないでしょうし、私も描きたくないので、描かないようにしています。