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2021/07/18

genre : ライフ, 社会

 一方で、正当な値付けに便乗する形で、簡易的な修繕しかなされていない車両が高値で売りに出されることもあるようだ。

「同じでなんでこんな、ってのも正直あるよ」

 レストア済とされている車でも、整備状態はさまざまであり、ユーザー側が状態を正確に見極めることは難しい。とりあえず見た目や当面の走行に問題がないレベルなのか、長く快適に乗れるレベルなのか。あるいはそもそも走行に支障が出てしまうようなレベルなのか、価格からは判断できないのだ。

ハコスカのリアパネル下方を切り落とした画像。これでも、過去に新品に交換した形跡が見られたという。内部のサビを放置したまま、不完全な溶接で取り付けられていたために、ここまで腐食が進行してしまった 写真提供=有限会社スターロード

 オーナーが長年乗り続けてきた車、あるいは他所で購入した車が、それまで不十分な修繕しか行われておらず、フタを開けてみると悲惨な状態に陥っていた、というケースも多いようだ。

「調子が悪いと思っても、そのまま『こんなもんか』って乗り続けちゃう人も多いからね」

 旧車オーナー自身もトラブルをある種の「前提」と考えている節があるのかもしれない。そもそも、発売から数十年が経つ旧車を、ユーザーが新品の状態と比較するのは不可能だ。

「さんざん嫌な思いしてからウチに来る人もいる。買ってから全然まともに走ってくれなくて、お金ばっかかかって、修理に出してる時間の方が長いとか。それで戻ってきてまた壊れる、みたいな繰り返しでさ」

 こう聞くと、「やはり旧車は維持するだけでも大変だ」と考えてしまう。一方で、スターロードでは「10年は消耗品の交換だけで乗れる」と客側に伝え、実際にそれ以上の間「トラブル知らず」の車両も多いという。

 発売から半世紀が経とうかという車種を、現行の新車以上に「メンテナンスフリー」にしてしまう。まるで魔法のような話だが、一体、何がそれほど違うのだろう。

見た目はキレイでも中身は……

 たとえばボディの修繕である。レストアにおいてはまず、経年により腐食した箇所への対処が、その後の工程の前提となる。

「ボディ見たらもう全部わかるよ」

 そう言って、ジャッキアップされたハコスカの下回りを見せてくれた。

ジャッキアップされたハコスカの下回り。このように、タイヤの裏側には足回りを支える部品が複雑に入り組んでいるが、普段は目にしないため問題に気づきにくい 写真提供=有限会社スターロード

「たとえばこれ、テンションロッドだけど、紙みたいに薄くなってるでしょ。ブレーキ支えてるのここだけなのに、もげるよこれじゃ。スタビ止めてるとこもグニュグニュでしょ。ハンドル取られちゃう。『湾岸ミッドナイト』の『悪魔のZ』も乗り手の意思に反して動くけど、あれもこの辺が腐ってたのかもね(笑)」

テンションロッドの付け根を拡大した画像。話にある通り、接合部の鉄板が紙のように薄くなってしまっている。テンションロッドはサスペンションの前後方向の動きを制御する部分であるため、このままでは発進や制動時などにガタつきが生じてしまう 写真提供=有限会社スターロード

 悪魔のZの足回りが腐っていた、というのは衝撃的な新説である。ともあれプロの目にかかれば、旧車のさまざまなトラブルも、具体的な原因をすぐさま突き止められるわけだ。