新たに部品を製作する際、なるべくメーカー純正の「オリジナル状態」に寄せることも選択肢だが、「快適性や走行性能をオリジナルよりも高めたい」といったユーザー側の希望に応えられるよう、独自の観点で改良を加えたパーツを取り入れることもありうる。
スターロードはハコスカやZなど専門とする車種について、オリジナルのパーツ開発も行っており、全国のユーザー、ショップのほか、世界各国から注文が寄せられている。欧米やアジア圏だけでなく、「こんな国にも日本の旧車が」というケースもしばしばだ。つい先日は「トリニダード・トバゴ」からの注文があったというから、旧車ブーム恐るべしである。
やはり専門領域を突き詰めるほど、その車種への対応力は向上していくというわけだ。
「美化された思い出とのギャップ」を埋める
それでは一方で、旧車を所有するオーナー側の事情はどうか。
旧車のオーナーには「同じ車を乗り続けてきた」ケースもあるが、「青春時代を共にした車にまた乗りたい」といった思いから、再度その車種を探すケースも多いようだ。
「昔乗ってたからって人は多いね。ただ、その間に何十年って新しい車に乗ってきたわけだから、感覚はそっちになってる。昔のことが美化されてるのもあって、そのまま乗っても『こんなヤバかったっけ』みたいになることも多いよ。体も変化してるしね」
性能や装備差に加え、ユーザー自身の感覚的・身体的変化もあり、「美化された思い出とのギャップ」にショックを受けるというわけだ。
旧車マニアのうちには、「こうしたショックを乗り越えてこそ」と考える向きもあろうが、井上氏の方針は異なっている。
「ウチで作ることで、そういう『隙間』を埋めていく。旧車らしさはそのままに、疲労の原因を取り除いて、クオリティを現行車に近づける」
現行車レベルのクオリティを実現するため、井上氏は感覚のアップデートを欠かさない。現行のGT-Rが発表された時も、現代における最高峰の技術を知るべく即刻注文を入れ、その性能を確かめた。