近年、車業界では空前の「旧車ブーム」が巻き起こっていると言われる。海外需要による人気車種の流出といった背景もあり、旧車市場は高騰の一途をたどり、車種によっては数千万の値がつくことも珍しくない。
過熱する旧車ブームのなかでも、安定して高い人気を誇るのが60年代後半から70年代にかけて生産された日産のスポーツカーである。「ハコスカ」や「ケンメリ」の愛称で親しまれるスカイラインや、『湾岸ミッドナイト』の主人公機として知られるS30型フェアレディZなど、国内外を問わず熱狂的なファンが多い。
こうした「旧車界のスーパースター」とも言うべき日産車を専門に扱うのが、東京都江戸川区のスターロードだ。同社の井上代表に、スターロードの看板車ともなっている自身のS30Z(愛称:ファイターZ)などについて話を聞いた。
半世紀前の車で現行スーパーカーと同等の走行性能
「手が入っていないところがない」という井上氏のS30Zは、旧車界隈では名の知れた存在であり、雑誌などメディア掲載も多い。関心の的となっているのはもちろん、この1台に凝縮されたスターロードの技術の高さである。
まずはわかりやすく、その「速さ」を客観的な数字で見てみたい。スポーツカーの性能を示す際には、著名なサーキットのラップタイムが指標とされることが多く、日本においては「筑波サーキット」の周回タイムがしばしば参照される。
井上氏のS30Zは「筑波1分1秒台」を達成しており、この数字は現行の日本車で最速となる「GT-R」と同等の水準だ。半世紀前の車で、最新テクノロジーの結集たるGT-Rと張り合えるというのだから、それこそ『湾岸ミッドナイト』や『頭文字D』の世界である。
「速さ」は目的ではない
しかし、このように「速さ」を喧伝するのは井上氏の本意ではないという。このS30Zは「サーキット専用」でもないし、峠や高速を疾走する目的で製作されたわけでもない。
「もともと『快適』ってことを言ってきたんだけどね。あんま快適快適言ってると、ナメられるかなと思って。最近だね、まともにサーキット走ろうとしたらどうなんのかって」
あくまで「ストリート仕様」として、街乗りにおける快適性やバランスを追求した結果、サーキットのタイムにつながったわけである。