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金を騙し取っただけの詐欺師

 色々なビジネスに手を出してイマイチだった、失敗した、惨めだったこともあったんだけど、それはまだマシな方で、中には単に俺から金を騙し取っただけの詐欺師もいたんだ。

 そういう輩の共通項は、会っていきなり握手をして来るところ。アメリカ人気取りみたいな感じで、挨拶もそこそこに笑顔でガッチリ握手してくるヤツがいるでしょ。俺の経験則から言って、それをやってくるヤツはまず詐欺師だと疑った方がいいね。そういうタイプにはマトモなヤツが1人もいなかった。

 最初に仕掛けられた詐欺は、新宿三丁目でうどん屋兼居酒屋を始めようって話だった。二丁目のゲイバーやホモビデオといい、AV男優スナックといい、どうも俺はあの辺りに縁があるんだけど、この話は中学生の頃の同級生が誘ってきた話だったから、つい信じて乗っかってしまったんだ。

満面の笑みの沢木和也氏

 店のオープンに700万円かかると言われて350万円ずつ出して、何とか開店はしたんだけど、結局潰れちゃったんだ。その時は「飲食店は水物だからな」と納得したんだけど、後から別の人間に色々と背景を聞かされる機会があって、それによると実は700万円も掛かっていなくて、半分の350万円で店は作れたらしいんだよ。だから、俺が出した350万円っていうのは、単にその同級生の懐に入っておしまいだったの。

 自分で言うけど、俺はそもそも人のために動くタイプだったんだよ。パクられてしまった麻薬の件だって「みんなが買いにくいと困ってるから」って理由が少なからずあったからね。「じゃあ俺が買ってやるよ」って。今にして思えば「なんてバカなんだろう」とは思うけど、純朴な田舎の人間特有のお節介って感じでしょ(笑)。

 それがまさか同級生に騙されるとは思わず、この件で完全に人間不信になってしまったんだ。人間好きで誰にでもいい顔しちゃうような俺っていうのは、こういう出来事を経て、他人には見せなくなっていったね。

 少し時系列が飛ぶけど、次に詐欺師に出会ったのはAV男優としてバリバリ働いていた20代の頃だった。AV業界の人間から「一緒に制作会社を作ろう」っていう話を持ち掛けられて、ついつい話を聞いてしまったんだ。