鳩森神社のお花見で初めて会いました
一時期「女流棋士」を目指すも、数年でその夢を諦めたという伊奈さんだったが、将棋との縁が切れることはなかった。それが棋士・渡辺明さんとの出会いである。きっかけは『将棋の渡辺くん』のなかでも紹介されているが「詰将棋チャット」だったという。
――この「詰将棋チャット」というのは、どのようなものですか?
伊奈 詰将棋が好きな人が集まって話すところですね。詰将棋が好きな人には、クイズを好きな人も多くって、みんなでクイズ番組を見ながら答えを考えたり、あとアイドルの話をしたりいろいろですね。
――そこに渡辺明さんが参加されていたわけですね。どうやって出会うことになったんですか?
伊奈 将棋連盟の隣にある鳩森神社で将棋関係者がお花見していて、そこで実際に初めて会いました。彼が高校を出たばかりの頃ですね。だから19歳くらいでしょうか。私はその4つ上になります。
――そこからご結婚までは、あまり間がないんですか?
伊奈 一瞬ですね(笑)。彼が高校を卒業したばかりの4月に出会って、8月くらいからお付き合いして。その翌年の2月に籍を入れて、7月に子供が生まれましたね。
――ほんと一瞬ですね。ではじっくりプロポーズとかもなく?
伊奈 ないですね。付き合いが始まったのも、複数人で遊んでいるうちに、なんとなくでした。
――お付き合いされるなかで感じた、渡辺明さんの人柄ってどういうものですか。
伊奈 素直な人だな、と。
――ふふふ(笑)。漫画を見ていると、わかりますね。
美大に行ってるなら漫画は描けるだろうと
さて渡辺明という棋士と出会って、妻、そして母になった伊奈さんは、2007年から『妻の小言』というブログを始める。渡辺一家の日常を綴ったものであるが、これが『将棋の渡辺くん』につながっていく。
――ブログを書いていると、何度か「本にしませんか?」という話があったそうですね。
伊奈 でも、そんなに売れるとも思えませんよね。だからお断りしてたんです。
――では、のちに連載が始まる講談社の『別冊少年マガジン』の話をお聞きになったのはなぜですか。
伊奈 それは「漫画にしませんか?」という話だったので。
――ブログでは、漫画を描いていたわけではないですよね。
伊奈 イラストが少しあるくらいです。だから「漫画」と聞いて「えっ?」と思って。
――なぜ、漫画というオファーになったのでしょうか。
伊奈 それはブログの記事のなかで、私が美大に行っていたことを書いていたからですね。美大に行ってるなら漫画は描けるだろうと……。