テレビ東京の『ナゼそこ?』を見ていたら「おいおいおい」と声が出た。だって番組ののっけから「秘境路線バスの終点」とか言い出すんですよ。さらに「あなたより秘境に住む人知りませんか?」。

『ポツンと一軒家』と『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』のつまみ食いかよ!

 と、誰もが思うところだ。今どきはモロパクリを堂々とやるほうがかえってウケる世の中か……と世相を嘆きつつ調べてみると、『ナゼそこ?』は、2011年『日曜ビッグバラエティ』枠の「世界のヘンピな所でがんばる日本人」が元になって改題・リニューアルされた番組で、『ポツンと~』は2017年からですと。えーっ、秘境に住む人をバラエティにしたのはこっちが先かい!

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『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』は2007年。これに関しては後発か。同じ局の番組だし何らかの仁義は切られたとみていいのか。『ナゼそこ?』は秘境訪問が主であって秘境に鉄道駅はないし、「空港でレンタカー借りて行く」んじゃ苦労が足らん。なら一日に数本しかなく、乗客もほとんどいないような路線バスに乗っていくほうが絵になる。まあ目的じゃなくて手段だ。今は「路線バス」って言葉がバラエティ的にキャッチーなので使ってるだけとみた。内容に『ローカル路線バス~』のパクリ感はない。いきなり疑って申し訳なかった。

※写真はイメージ ©iStock.com

 しかしだ。疑いが晴れた上で、あらためて『ナゼそこ?』を見て、いろいろひっかかりが生じてきた。

 そもそも、出てくるのが秘境じゃない。『ポツンと一軒家』がうまいなあと思うのは「一軒家」であることで隔絶感が大きく、希少性、秘境性がきわだつのだ。

 こっちで出てくる秘境、家何軒もあるし。住人の交流あるし、途中の道がバスが通るのが信じられないような山道だといっても、その先の「秘境」がふつうの集落じゃダメだろう。山奥にありがちな高齢者家庭で、畑たがやしたりして暮らしてるのを「すごい!」みたいに言われても……。

 この番組、この回が「徳島&愛媛の県境……路線バス終点の先で発見!」という惹句なのである。

 私は徳島在住だ。秘境を訪ねるスタッフが山を見て「雲海が!」とか「山の斜面にけっこう家が!」とか言ってる、その景色はうちの窓からも同じようなもんが見えてるんだよ。うちは市内で秘境じゃないけど、景色はこんなんです。

 そんな景色を見ながらスタジオの新井恵理那が「ほんとに人いるのかな」とか言ってるのを聞くと「こんなもんフツーだよ! もっとすごいとこ見つけてこい!」と叫びたくなる。

 都会人だってこれじゃ驚かない程度の秘境だろう。仕込みが浅い。先発の意地を見せないでどうする!

INFORMATION

『ナゼそこ?』
テレビ東京系 スペシャル番組
https://www.tv-tokyo.co.jp/nazesoko/