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「ペヨーテ」はサボテンの一種であり、アルカロイドなどの陶酔性成分メスカリンをふくんでおり、服用すると鮮やかな色彩幻覚を生ずる一方、強い吐き気などの中毒作用も強い。かつて中米の地に栄えたメソアメリカ文明では、神々を祀る手段として人身御供が広く行われていた。とくに穀物の神シペ・トテックなど、幾柱かの神に対する儀式の際は、石器のナイフを用いて生贄の全身の皮を剥がし取り、剥がされた皮を神官が身に纏って踊るなどの儀礼を行っていたのだ。

「テオナナカトル」はシビレタケ属の毒キノコで、アルカロイドのサイロシビンおよびサイロシンという幻覚を引き起こす成分をふくんでいる。この種は200以上存在し、世界中に広く自生している。

 これらのキノコ類の乾燥品は、一時期「マジックマッシュルーム」という名前で、インターネット上で販売されていた。現在では麻薬原料物質としてサイロシビンやサイロシンをふくむキノコ類が規制の対象となっており、輸入、輸出、栽培、譲り受け、譲り渡し、所持、施用、広告といった行為は法違反になる。

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インカ帝国とコカの葉・コカイン

 現在でもコカの木の葉は、ボリビアなど南米の一部で合法的に栽培され、嗜好品として用いられている。

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 コカインは、コカの木の葉から抽出・精製される麻薬である。インカ帝国では、国民に毎日、一定の時刻に使用することを許していたという。国民の生活が厳しく、空腹による飢餓感を抑えるためと強壮剤として用いられていたようだ。

 コカインは、現在も有効な局所麻酔薬として手術に用いられているが、服用すると幸福感や楽天感、性欲亢進などをおぼえるため、麻薬として、アメリカをはじめ世界中で濫用されている。「身体的依存性はなく、中断による禁断症状は起きない」とされているが、精神的依存性は甚だしく、濫用から生じる中毒で死を招くことも多い。アメリカではコカインの使用者が激増しており、その取り締まりは困難をきわめ、「麻薬戦争」といわれるほどの大きな社会問題となっている。