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幻覚剤の恐ろしすぎる“使い道”「踊り続けた男は石ナイフで胸を引き裂かれ、脈打つ心臓がつかみ出された…」

『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』より#2

2021/07/23
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大麻を常用するとどうなる?

 19世紀のヨーロッパでは、不安の緩和や催眠のために大麻は医薬品として処方されていた。ところが20世紀になるとアメリカ政府は医療用をふくむ大麻を禁じる法律を制定した。

 現在、メディアでは世界で大麻がどんどん解禁されているかのような記事が出ている。実際、アメリカでは、ワシントン州、コロラド州、カリフォルニア州などの州で娯楽品としての大麻が限定的に合法になっている。オランダは、厳格なガイドラインのもとで大麻などのソフトドラッグを規制対象外にし、カナダでも娯楽品としての大麻が合法になった。

 あなたは、大麻はそれほど危険な薬物ではないと考えているかもしれない。しかし、実際には、イギリス、ドイツ、フランスなどでは依然として大麻は違法薬物であり、日本をふくむほとんどの国で厳しく規制されているのだ。国際的には非合法の国のほうが圧倒的に多いのである。

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©iStock.com

 THCは脳内の海馬や小脳などに作用する。その作用は、服用者によって個人差があり、用量や投与経路(喫煙か経口摂取かなど)によっても異なるが、意識がだんだん変化して夢幻状態になってくる。思考の前後の関連性がなくなり、自由奔放に思考が駆け巡るようになる。数分が数時間に感じられたり、近くのものが遠くにあるように見えたりする。大量に服用すると、幻覚を経験する。極端な安寧感や喜びの興奮が起こり、笑いが止まらなくなったりする。

 1人の場合は鎮静的であるが、仲間と一緒になると多弁で陽気にふるまう現象も見られ、大量投与では死の恐怖感が観察される。フラッシュバック現象がしばしば起こり、妄想、幻覚、幻影におびえることになる。「精神的依存はそれほど強くなく、身体的依存はない」とされるが、大麻を常用すると脳の機能低下、認知障害、呼吸器障害、生殖機能障害などの悪影響が出るのだ。

 さらに、大麻使用によって、自動車事故を起こしたり、自殺する危険性が高まることも知られている。インドの旅行ガイドには、大麻を摂取して屋上などから飛び降りる事故例が掲載されている。私はインドを旅したときに、マリファナ入りのラッシー(乳酸菌飲料)を飲んだ日本人が口から泡を吹いて倒れたり、問題行動を起こしたりするのを何度か見かけたことがある。

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている

左巻 健男

ダイヤモンド社

2021年2月17日 発売

幻覚剤の恐ろしすぎる“使い道”「踊り続けた男は石ナイフで胸を引き裂かれ、脈打つ心臓がつかみ出された…」

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