そういったかつてのファンである客と接するときは、緊張もあるという。
「みなさんとても優しいんですよ。それこそ、アイドルに会うみたいな気持ちで来てくださっています。だから、『もうただのおばちゃんだから、本当にごめんなさい……』って気分になっちゃいますね。それでも、『変わってないね』と言われると嬉しいですよ。当時の話をするのも楽しい。過去の話も嫌ではありません」
長谷川瞳じゃない自分は考えられない
AV女優として活動していた4年間は、自分にとってどんな時期だったと思っているのだろうか?
「青春時代でした。本当に青春時代だったと思う。当時、仕事で知り合った女優の子たちとは今でも友だちです。頻繁に会うというわけではないけれど、会うと当時みたいに自然に話すことができる。やっぱり同じ時代をわかりあった“戦友”みたいなところがあるんですよね」
もしAVをやらなかったら、別の人生があったのではと考えることはないのだろうか。
「それは考えられません。やらなかったら、暗い人生を歩んでいたんじゃないかな? あの頃は精神的に不安定でしたし、AVに救われたんだと思います。風俗業界でも同じようなことがあるんですよ。風俗をやることで精神を病んじゃう子もいますけど、逆に風俗をやったことで治ったって子もいるんですよね。AVの現役時代で後悔しているのは、ベストじゃない状態での作品が世に出てしまったということ。あれを見てしまったユーザーさんには謝りたいです」
長谷川瞳の名前を使うようになって、もう16年になる。その名前は、もう本名と変わらないくらいに自分自身と固く結びついている。
「長谷川瞳を切り捨てるということは考えたことはないですね。もう自分自身ですし、長谷川瞳じゃない自分は考えられません。『長谷川瞳ちゃん』だったおかげで、売れてくれたおかげで今の自分があって、『本当にありがたいな』って思っています。むしろ、長谷川瞳にならなかったらと考えるとゾッとするくらい(笑)。考えたくないです」
ライターとしての長谷川瞳
長谷川瞳はソープランドに勤務する傍ら、ライターとしての仕事もしている。AV女優を引退してからすぐにはじめているので、キャリアは10年以上になる。
「AV女優をしているときに、雑誌に漫画を描くお仕事があったんです。そのときに担当してくださった方が『長谷川さんはなにか書いたらいいのに』と言ってくれて。それから、ライターのお仕事をいただくようになりました。長谷川瞳の名前で書くこともありますし、名前を出さないこともあります。むかしから書くことは好きでしたから楽しいですね。それと、じつは小説を勉強しています。全然ちがう名前で書いていますが『オール讀物』(文藝春秋)新人賞の三次までいったこともあるんです」