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「国税局の○○さん〈原文は実名〉にうち合せの日に電話で日にちをずらして

ほしいと言ったところものすごいけんまくでおどされました。

『約束しましたよね?』『いつどこで誰とあうんですか』と仕事の内容についても

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調査だからと協力するよう脅されました。

『売春業でも申告は必要だと言われ、あたかも私が

他人の紹介で売春を行っていたかの様に脅されました。

私が過去の婚約者からもらった慰謝料と言っても

『そんな筈はない』と笑われました。

このままだと『査察』に引き継ぐことになると言われ

まるで犯罪者の様な口調で話をされました。」(原文ママ)

 里美さんはそれ以外にも「7年前の○月○日、○円を口座に入れてるけど、これは何のお金?」「これはどこで、誰と会ったときのお金? 飯は何食った? 思い出して」「これはタクシー代としてもらった金? 何月何日何時ごろ、どこからどこまで乗ったの?」「これは誰からのお金? その人の連絡先は?」などと、根掘り葉掘り尋ねられた。逐一思い出せるはずもなく、聴取中に過呼吸症候群になるほど動揺した彼女は、やむなく供述書にサインした。

「私は『女優業』ですから決して『サービス業』ではありません」

 最初の事情聴取から2カ月後の14年6月19日に、里美さんが所轄の目黒税務署長に提出した、ワープロ書きの申述書(重加算税を課せられた納税者が、不正な税務処理を行ったと認めて提出する文書)にはこう記されている。その一部を抜粋しよう。

「1、確定申告について

 私の税に対する無知、認識不足によりプロダクションからの報酬につきましては10%の源泉所得税が差し引かれていたので申告はしなくても良いものだと思っておりました。大変申し訳なく深く反省しております。

2、税務調査時における供述について

 調査官から『サービス業』との指摘があり供述書にサインさせられましたが私の無知とその場から一刻でも早く立ち去りたい気持ちから安易にサインしたものです。私は『女優業』ですから決して『サービス業』ではありません。

3、売春行為が違法であることの認識について

 私が今まで貯めたお金につきましては交際していた男性から確かに金銭の授受はありましたが私が決めた金額でもなく精神的、肉体的な慰謝料として頂いたもので自由恋愛の結果だとおもっております。売春行為が違法であることは知っていますし、ましてやそういう事を職業として考えた事は一度も有りません。 私の住居のセキュリテイが悪く物騒なので預金に入金しておりましたが全てお金は自分の名義で貯蓄おりましたし、決して隠そうと思ったことはありませんでした。

 以後このようなことがないように適正な申告をするよう努力いたしますのでどうか寛大なる処分をお願い申し上げます。」(原文ママ)

【前編を読む】「君が自由に使える裏金を工面してくれるはず」 “悪魔の囁き”に耳を傾けた青汁王子…脱税工作の知られざる“真相”

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