2012年7月24日、僕は電車との接触事故によって右腕と両脚を失った。
当時20歳だった僕は、大学を中退してケーブルTVの営業職として働き始めたばかり。この仕事を天職と感じ、全力で取り組んでいたときに起きた事故だった。
(山田千紘著『線路は続くよどこまでも』より)
現在29歳の山田千紘さんは航空関連会社で働く会社員。朝電車に乗り出勤する。スーツ姿では気付かない人もいるが、彼の両足は義足、右腕は義手。ヘルパーも同居人もいない1人暮らしで、炊事・洗濯はもちろん、左手1本でなんでもこなす。しかも破格のポジティブオーラを放ちながら。
そんな山田さんが、昨年開設したYouTubeチャンネル「山田千紘 ちーチャンネル」は、1年足らずでチャンネル登録者数10万人超。そして配信開始から1周年となる7月24日、今まで自分の身に起きた体験や考えを綴った『線路は続くよどこまでも』を発刊することになった。その直前である7月13日、山田さんにインタビューを行った。(全2回の1回め/後編を読む)
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事故に遭って以来、夢だった本を出版
――一足先に山田さんの『線路は続くよどこまでも』を読みました。YouTubeで見る印象の通りの山田さんであり、素晴らしい内容でした。
山田千紘さん(以下「山田」) ありがとうございます。もともと、YouTubeもこの本も、事故に遭ってから僕がどういう道を歩んできたか、そのままの僕を知ってもらおうと思って始めたことなので、どちらも印象は変わらないと思います。
事故に遭った日、ハードワークで相当疲れがたまっていたが、人付き合いも手を抜かなかった山田さんは、約束をしていた飲み会に参加。終電間際の電車に乗り込むと爆睡。乗り過ごして終着駅へたどり着く。そこで駅員に起こされたらしいが、そのあたりの記憶が全くない。上り電車に乗ろうとして線路に転落した山田さんは、最終電車に轢かれてしまう。
目覚めたときはベッドの上で、両足と右腕を失っていた。「人生が終わった」と思ったが、それは新たな山田さんの人生の始まりでもあった。
『線路は続くよどこまでも』は、壮絶な事故以降、周りに支えられることで心を新たにし、残された体の機能を駆使して生活を取り戻していく日々を振り返った自伝本である。
――この本を出版することになったきっかけは?
山田 事故以来、本を出すことは夢の1つだったんです。僕はSNSを通して仕事のオファーをいただくんですが、何社か出版の話もいただいてました。そんななか今回担当してくれた編集者さんは本当に熱意があって、僕の使っている義足のメーカー「オズール」にまで連絡してくれた。それでオズールの代表が「悪い人じゃなさそうだった」と僕の背中を押してくれました。
――本を出すことを伝えた動画「皆様に大切なお知らせがあります」のコメント欄に視聴者が「結婚かと思った」と書いていました。その可能性もあったんですか?
山田 いや、全然ありません。おそらく「大切なお知らせ」や「重大発表」って聞いたときに本の出版をイメージする人がいなかったんでしょう。それに、本を出すのは時間がかかるけど、出版の準備を進めているということを、全く匂わせてなかったので。