モンゴル出身力士の強さの傾向が変化している
そしてモンゴル勢ですが、横綱が4人誕生して以降は照ノ富士を除いて上位に定着できておらず、むしろこれらの力士が例外的に強かったという見方さえできるかもしれません。モンゴル国内でトップ中のトップの素材は、大相撲ではなくレスリングなどでオリンピックを目指す時代になってきているという話があります。日本国内で行われている中学生以下の相撲大会にモンゴル人選手が参加していますが、ここ数年は日本人選手が上位で勝利する傾向にあり、もしかすると日本人力士優位の傾向は今後も続くかもしれません。
もちろん、大相撲の世界で上位10%に入れる力士が今もなお多いという意味で外国出身力士、モンゴル出身力士が強いのは確かですが、強さの傾向が変化してきているのは見逃せないと思います。現在は朝青龍の甥である豊昇龍や、鶴竜と同部屋(陸奥部屋)の霧馬山といった若手の逸材が幕内で着々と実力を付けてきているので、彼らがそうした傾向を打破する存在になるのか注目です。
モンゴル、東欧、ハワイ……それぞれの相撲スタイル
ちなみに、ひとくちに外国出身力士と言っても、モンゴル人力士と東欧系力士、そしてハワイ出身力士では特徴が異なります。あくまでも全体的な傾向ではありますが、モンゴル人力士はスピードと敏捷性に優れていて、体が小さくても先手先手を取ってそのまま押し切るような取り口が多く、また体格に勝る力士に攻め込まれても隙を見つけて逆転する相撲が多く見られます。東欧系力士はアスリート的な能力と体格に優れていて、相撲は粗削りでも吊り出しなどの豪快な形で決着を付けることができます。ハワイ出身力士はパワーを前面に出した相撲が特徴で、小錦や横綱昇進前の曙のように、前に出る圧力の強さで勝負をする取り口が多く見られます。最近ではモンゴル人力士と日本出身力士はそんなに相撲のスタイルが変わらないのですが、先述の豊昇龍と霧馬山はかつての朝青龍や日馬富士を思わせるようなスピードと敏捷性、そしてスケールを兼ね備えています。
ここまで述べてきた傾向は確かにありますが、一人の力士が抜きん出た存在になり、勢力図を大きく塗り替えることもあります。今は日本出身力士が上位で数多く活躍していますが、かつてのような時代が復活する日が来るかもしれません。外国出身力士と日本出身力士という対戦構図で大相撲の質がさらに上がると良いですね。
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