モンゴル出身の力士として日本相撲界を圧倒し、相撲ファン以外にも大きなインパクトを残した朝青龍。また、先日行われた大相撲名古屋場所千秋楽も優勝を果たしたのはモンゴル出身の白鵬だった。なぜ、外国人力士はこれほどまでに“強い”のだろうか。

 ここでは相撲ライターの西尾克洋氏の著書『スポーツとしての相撲論 力士の体重はなぜ30キロ増えたのか』の一部を抜粋。外国人力士の強さの謎に迫る。(全2回の1回目/後編を読む)

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優秀な力士の割合は外国出身力士のほうが圧倒的に多い

 まず、現状について目線を合わせたいです。外国人力士はある側面から見ると今もなおとても強いと言えますが、別の面から見ると朝青龍全盛期や白鵬全盛期と比べるとそこまで強いわけではありません。

 外国人力士の優秀さについて現状を見てみましょう。

 大相撲で優秀な力士とされるのは、十両以上の番付の関取と呼ばれる力士達です。彼らは年収1000万円を超え、付け人が付き、個室が与えられます。場合によっては相撲部屋ではない場所に住まいを借りたり購入することも可能です。しかし、それよりも下の地位(幕下以下)だと年収は100万円以下でほとんどの場合は関取や親方の付け人を務め、大部屋での生活を余儀なくされます。

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 大相撲には2021年1月現在676名の力士が在籍しており、その中で十両以上の力士は70名。上位10.7%に入る力士が優秀で、待遇も一人前とされますが、幕内に所属する外国出身力士(日本国籍を取得した力士もいるためこの呼称とします)は11人、十両は3人です。幕下7名、三段目4名、序ノ口1名なので、割合では53%が優秀な力士と言えます。

 対する日本出身力士は幕内が31名、十両は25名。幕下が113名、三段目は196名、序二段が218名、序ノ口56名、前相撲と番付外を合わせて11名。日本出身力士の十両以上の比率は8%ということで、外国出身力士と比べると大きく水をあけられている状態です。優秀な力士の割合で見ると外国出身力士のほうが圧倒的に多いのが実情ですが、果たしてこの差はいったいどこから来ているのでしょうか?