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現代のDJが制作したとしか思えない「イエイエ」

 作品群を検証していくなかで、そういった意味で何より衝撃を受けたのが、同じくレナウンのCMで、’67年の、これも作詞作曲をされた、朱里エイコの歌う『イエイエ』だ。何故か私にはこの曲の記憶がまったくなかったこともあって余計に新鮮に思えたのかもしれないが、とにかく再生した途端の衝撃だったのである。

朱里エイコ「イエイエ」

 具体的には、ワンコードのメロディに乗せた♪イエイエという歌詞とドラムのビートだけというアレンジで始まるのだが、これが大袈裟ではなく本当に誰が聴いても今日DJが制作したとしか思えない音質/音響でありミックスでありテンポだったのである。思わず、この私が、誰か今の若い子のカバーした新録音バージョンかと、そう早とちりしてしまったぐらいだ。

小林亜星 CMソングスアンソロジー

 ’67年というと世を挙げてGSの真っ盛り、我が商業音楽革命のときでもあったが、当時のどんなかっこいいレコーディングも今聴けばあの時代の匂いは必ずする。この曲の出だしには、それがまったく一切感じられなかったのである。そんな経験はマジ初めてだった。

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 興味を持たれたDJの皆さんには、是非一度試聴されることを(釈迦に説法とは承知)一応本気でお薦めしておく。

「♪あなたとコンビにファミリーマート」

 その一方では、わずか数秒のコピーを永遠に我々の耳に焼きつかせて離れないものにしてしまう(一例がおなじみの♪あなたとコンビにファミリーマート)、泥臭いというのか、ベタな作風も自家薬籠中のものとしていたのだから、いや作曲家としての懐の深さ、引き出しの豊かさには、脱帽せざるを得ない。

 CM音楽と同時に、我々世代が知らず知らず亜星さんに大変にお世話になってきたのがアニメ(というかテレビ漫画)その他の主題歌群である。

 ♪ボバンババンボン ブンボバンバババ ボバンボバンボン ブンバボン

 という歌い出しの、いかにもステレオタイプな密林の光景を連想させるようなそのワイルドなリフに毎回ワクワクしたことは、今でも楽しい思い出である。

水森亜土

 なんといっても一番に好きだったのは、ナンセンスな歌詞を水森亜土が素っ頓狂な声で歌うのがたまらない、ひみつのアッコちゃんエンディングの『すきすきソング』だ。

 あまりに好きだったので、T・レックスみたいなアレンジをほどこし、昔はよくステージで演奏したものである。

 この2曲にしても、作曲者が誰なのかについてこれまで興味を持ったことの一度もなかったことは正直に追記しておきたい。

 いくらその歌が大好きでもーー余程のマニアでもない限りーー作詞作曲クレジットの方にはなかなか目がいかないてぇのが主題歌/テーマソングやCM音楽の宿命ではあるのだ。

 ところで、寺内貫太郎の大ブレイクのことである。これはとどのつまり久世光彦のーー番組創作の場としての民放キー局というものの特性を知り抜いたーー采配のなかりせば、叶わなかった現象だったと、私は思っている。