大谷翔平って、やっぱり格好いいね。MLB(大リーグ)は、こんなに面白いんだ。コロラド州デンバーから生中継されたオールスターを観て、多くの日本人がそう思っただろう。

エンゼルス・大谷翔平 ©文藝春秋

 心ある五輪関係者なら、ああ、これこそがスポーツの祭典なんだなと、悔しさを覚えつつも認めたことだろう。多くの観客と国民に求められ、歓喜の声に包まれたときに、スポーツ・イベントは〈祭典〉になる。

 開催の中止、無観客を求める声が圧倒的な中で強行される五輪に、もはや意義はない。誰もに待望されて開かれたときだけ、五輪は特別な祝祭になる。

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 ああ、それなのに。開幕に先立ち女子サッカーのあった夜、渋谷の若者たちが路上飲みしていたと「日刊スポーツ」は報じた。FW岩渕の同点弾にも歓声はおきず、二十代男性は「始まっていることを知らなかった。オリンピックにあまり興味がない」と話す。

 これが今の日本の空気です。「五輪よりも大谷くんが観たい」。視聴者が熱望するなか、通常はMLBを生中継するNHKは、大谷より五輪を選んだ。

 大谷人気を無視して、十八日のエンゼルス対マリナーズ、菊池雄星との「花巻東高」対決という黄金カードをNHKBS1は放映せず、五輪特番を流した。そして二十日の大谷くん投手先発もスルー。

 当然ネットにはNHKへの不満が噴出。「大谷くんの中継してよ!ったく、信じらんない」「オリンピックなんかより断然大谷の試合の方が観たいでしょ」などの声をJ-CASTニュースは報じている。

 オールスターも良かったが、前日のホームランダービーも楽しめた。規定時間内に選抜選手が何十本ホームランを打つか。いかにもアメリカらしい娯楽性を前面に出したイベントだ。これまでは馬鹿にして、チラ見しただけだった。

 ところが。三分でホームランを二十本も打つって大変なんだよ(特大弾を打つと三十秒加算)。アメリカ野球のファン・サービス、そしてMLB選手の桁違いのパワーを実感できた。

 優勝候補の大谷くんが、全力を出し切って三分間バットを振りつづけ、ヘロヘロになって座りこむ姿に、球場の観客も大興奮。デンバーの標高は一六〇〇mで酸素が薄い。タフな大谷くんの息があがる。クタクタになり「疲れたぁ」と喘ぐ姿に「可愛いですね、こんな彼も」と解説者。休憩中には同僚選手からスマホに激励電話が。ホームラン競争で負けても、絵になる大谷くんって、やっぱりチャーミングだよ。

 最後に。NHKも“世論”には抗せず、二十六日の対ツインズ戦を皮切りに五輪中に七試合はMLB中継する方向のようだ。五輪よりも大谷くん。そんな正論がしっかり認知されたようだ。

INFORMATION

『大谷翔平2021MLB前半戦ハイライト』
NHK スペシャル番組 25:39~
https://www3.nhk.or.jp/sports/event/mlb