お金がある限り彼は逃げない。ホストクラブで百万単位を気前よく…
三日三晩、ユウキは店を休んでずっと一緒にいてくれました。お腹が減ると私の小さなサンダルをつっかけてコンビニでおにぎりやタバコを買ってきてくれました。
私の顔色をうかがわずユウキは無邪気にゲームに没頭しています。
彼のおかげで私は少しずつ感情と気力を取り戻し、食べ物の味がわかるようになりました。
ようやく死にたい気持ちから逃れられた日、初めて私たちは寝ました。
「ねぇ、夜もいなよ」
「うん、何時に終わるの? 待ってるから今日は同伴してくれる?」
「九時くらいかな。同伴するよ、安心して寝てなよ」
私は彼をベッドに残したままソープに出勤しました。なんだか幸せな気持ちです。あの部屋に帰ったら呼吸をしてる大きな生き物が待っている。それは限りなく生き甲斐に近い心強さでした。
彼は下っ端ホストの寮を出て、私の部屋で暮らし始めました。
それでも私たちは付き合ってはいません。
私の一番辛い時期に手を差し伸べてくれた彼に恩を感じ、感謝していました。そして助けてもらったのだから当然お礼をしなくてはなりません。彼はホストで私は客、それを骨の髄まで戒めないと醜い痛客に成り下がってしまいます。
私は店で大金を使うようになりました。一晩何十万、ときには百万単位のお金を気前よくシャンパンやクリスタルに変えました。
バカげていますが、こうしてお金を使っている間は優しくしてもらえる。私にお金がある限り彼は何処にも逃げない。この人はお金さえあげればずっと一緒にいてくれる。
恋人に逃げられ何もかも失ったあとの私には、それが救いだった。そんなことすらも、救いだったのです。
そして、こいつは手間をかけなくても金を使うと見透かされたのでしょうか、それとも何をしても逃げないと舐められているのか。彼からの扱いは日を追うごとにどんどん雑になっていきました。