文春オンライン

2021/08/16

優秀なエンジニアを惹き付ける「面接での言葉」

 今や優秀なエンジニアは引く手あまただ。都内の有名企業でも意中のエンジニア採用には苦労する。ましてや、これはDXを始めたばかりの北海道のアナログ組織の話。30人ものエンジニアを採用するのは困難に思われた。しかし、蓋を開けてみれば、都内からの移住も含め、1年足らずで17人のエンジニアが仲間入りしている。コープさっぽろの何がエンジニアを惹きつけているのだろうか。

 対馬は、「暮らしに直結する事業を営んでいることがポイントではないか」と分析する。「一般的にIT業界は、クライアントがいて、大手ベンダーが受注し、その子会社、孫会社、地場のベンダーへと案件が引き継がれる多重下請け構造になっています。そのため、実際にコーディングするエンジニアは、『私は一体何を作っているんだ』という状態に陥りやすい。ユーザーの顔が見えないものを一生懸命作るって必ずどこかで迷いが生じると思うんです。面接では必ず、『ここでは、自分や家族の暮らしをよりよくするための仕事ができる』と伝えています」

 対馬と長谷川の計画に参入した「半農半IT」を掲げるエンジニア、田名辺健人はこう語る。「コープさっぽろの商品やサービスは開発スタッフがみずから利用することが基本で、エンジニア自身が改善点を見つけられるから面白い」。そして、スタートアップ企業のハングリー精神や開発スタイルを浸透させることができれば、大企業の資金力を持ちつつスタートアップのスピード感を発揮できる。「実際、デジタル関連において私たちはゼロイチのスタートアップです。経営陣も失敗を認めてくれます。ガンガン失敗してやろうぜと。面接では、『創業メンバーになりませんか』と伝えています。最初のほうが苦労するから絶対に面白いですよ」

事業部門とシステム部門の「受発注の関係」を崩す

 対馬がエンジニア採用で重視しているポイントは何か。それは、「現場を知ろうとしないエンジニアは採用しない」ということだ。

著者の酒井真弓氏 ©文藝春秋

「誰かの役に立ちたいとか、地域に貢献したいと考えているエンジニアは、自然と現場に足を運び、自分の目や耳で現実を知ろうとします。現場に行かず、コーディングさえできればいいなんて冗談じゃありません」

「事業に情熱があって、事業をどうにかしたいからシステムをなんとかする」、対馬は一貫してこの順序にこだわる。その真意は、事業部門とシステム部門の間にあった受発注の関係を崩し、システム部門が現場で使えるかをシビアに判断できるよう、部門間のヒエラルキーを変化させることにある。事業側が欲しいと言えば何でもかんでも受け付けてベンダーに丸投げしていた過去を自省し、是正しようとしているのだ。だから、いくらスキルがあっても事業を理解しようとしない人がシステム側にいては本末転倒。誰も得をしないのだ。

 現在、コープさっぽろのエンジニアたちが取り組んでいるプロジェクトの一つが、組合員向けサービスのデジタル化だ。具体的には、「店舗と宅配の融合」、「CtoCサービスの提供」、そして「ドライブスルー化」の三つだ。