「全てをデジタルに置き換えよう」ではない
「店舗と宅配の融合」は、店舗だけでなく物流システムを有する生協だからこそスムーズに実現が見込める施策だ。日常的に店舗で買物をする人たちは、米や箱入りのビールなど重い荷物を持ち帰るのにうんざりしているだろう。店舗にとっても、それらの大型商品は限られたスペースを圧迫する一因となっている。両者の課題を解消するために、生鮮食品は持ち帰り、重い物はスマホでスキャンして宅配で届く、そんなスタイルを提供していきたいという。
「CtoCサービス」は、対馬がかねてから思い描いていたもので、コープさっぽろの店舗と物流プラットフォーム上で186万人の組合員が直接取引し合うという構想だ。すでにいくつかのアイデアが実現されている。コープさっぽろ店内にある「ご近所やさい」のコーナーは、出品する農家が自ら商品の価格を決めて、売り上げの8割が農家の収入になる仕組みとなり、彼らは高い利益率を確保できるのだ。
「そうなると農家の方も、有機野菜など単価が高いものを作って売ってみたいとなりますよね。農家の方々が主導権を持ち、利益率の高い商売ができれば、北海道はおのずとベースアップして豊かになっていくと考えています」
このやり方は、コープさっぽろにもメリットがある。直接取引となれば、在庫情報を管理する必要がない。野菜を売るスペースと物流プラットフォームを提供し、いつもの宅配に合わせて農家から回収、運搬すれば追加コストもかからない。
「ドライブスルー化」は、北海道ならではの課題に即したものだ。冬場は駐車場や店舗の入り口が凍結し、数メートル歩くのも危険がともなう。車から降りず、スムーズに商品を受け取れる仕組みを整備していきたいという。
どの施策も、一から新たに構築したり、全てデジタルに置き換えようというものではない。これまで培ってきたビジネス資産にデジタルを掛け合わせることで、より使いやすく進化させると言ったほうか正しい。だからエンジニアにも、現場の理解が強く求められるのだ。
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