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遺産総額は8億円から10億円とも

 彼女が関わったとされる一連の事件は、京都府向日(むこう)市に住む筧康雄さん(仮名、当時75)が、13年12月28日に自宅で死亡したことに端を発する。千佐子は筧さんとその約2カ月前の11月1日に入籍したばかり。彼女にとっては4度目の結婚だった。

 筧さんの死亡状況に不審を抱いた京都府警が司法解剖を行ったところ、胃に毒物が直接触れたとみられる“ただれ”が2カ所確認され、血液からは致死量を上回る青酸成分が検出されたのである。

 そこで、妻であり第一発見者の千佐子について調べを進めたところ、これまでに彼女が、結婚相談所を通じて出会った数多くの男性と交際や結婚を繰り返し、相手の死亡によって多額の遺産を相続していたことが判明したのだった。その総額は8億円から10億円と見られている。京都府警担当の記者は捜査の状況について説明する。

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「逮捕前、京都府警による千佐子への任意の事情聴取が何度も行われましたが、彼女は飄々(ひょうひょう)とかわし続け、『私はやっていません』と一切認めようとしない。ポリグラフ検査も行いましたが、そこでも完全にシロ(無実)との結果が出たそうです。そこで、『このタマ(千佐子)は絶対に自供しないだろう』との前提のうえで、まずは証拠固めに力を入れて、公判を維持できるようにする方針に転換されました」

 京都府警が千佐子に疑惑を抱き、内偵捜査をしていることが一部のマスコミに伝わったのは14年3月のこと。私自身もすぐに現場へと向かったが、逮捕前ということで、表立った報道こそないものの、20人近い記者が筧家の周辺で聞き込み取材をしていた。

 その時期、千佐子は向日市の筧家と、以前に購入していた大阪府堺市のマンションを行き来する二重生活を送っていた。向日市の近隣住民は、筧さんの死亡後に見かけた千佐子の姿に違和感を抱いていたことを私に語った。

「旦那さんが死んでから1月も経ってないのに、朝とか夕方とかに、化粧をばっちりとキメて、おしゃれをして出かけている姿を見かけています。なんでこの時期にあんな派手な格好を、と不思議に思っていました」