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千佐子との交際や結婚後に死亡したことが確認されている11人の男性

 この時点で私は、親しくしている記者たちの協力を得て、千佐子との交際や結婚後に死亡したことが確認されている11人の男性をリストアップしていた。彼らを死亡時期順に並べると以下のようになる(起訴された事件は*で表示)。

 (1)1994年9月に死亡(以下同)、最初の夫である大阪府貝塚市の印刷業・矢野正一さん(仮名・当時54)

 (2)2002年4月、交際相手の大阪府大阪市のマンション、ビル経営・北山義人さん(仮名)

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 (3)05年3月、交際相手の兵庫県南あわじ市の酪農家・笹井幸則さん(仮名・当時68)

 (4)06年8月、2番目の夫である兵庫県西宮市の薬品卸売業・宮田靖さん(仮名・当時69)

 (5)08年3月、交際相手の奈良県奈良市の元衣料品販売業・大仁田隆之さん(仮名・当時75)

 (6)08年5月、3番目の夫である大阪府松原市の農業・山口俊哉さん(仮名・当時75)

 (7)*09年5月(青酸化合物の服用は07年12月)、交際相手(裁判時は「知人」との表現)の兵庫県神戸市の元兵庫県職員・末松清人さん(当時79)

 (8)*12年3月、交際相手の大阪府貝塚市の元海運業・太田義和さん(当時71)

 (9)13年5月、交際相手の大阪府堺市の造園業・木内義雄さん(仮名・当時68)

 (10)*13年9月、交際相手の兵庫県伊丹市の元内装業・沢木豊さん(当時75)

 (11)*13年12月、4番目の夫である京都府向日市の元電機メーカー勤務・筧勇夫康雄さん(当時75)

 ここで名前の挙がった11人のうち、千佐子は(7)の末松さんへは強盗殺人未遂罪で、(8)の太田さんと(10)の沢木さん、(11)の筧さんの3人に対しては、殺人罪で起訴された。また、15年10月207日には(5)の大仁田さんと(6)の山口さんについて殺人罪で追送検され、11月6日には(3)の笹井さんと(9)の木内さんについても、強盗殺人罪などで追送検された。ただし、大阪地検はこれら4件については物証が乏しく、刑事責任の追及は困難ということで、不起訴処分とした。

©iStock.com

 最初の夫を亡くしたときに彼女は47歳で、自身の逮捕に繫がる4番目の夫を殺害したときは67歳である。その20年の間に、千佐子はいかに殺意を醸成させていったのか。無機質な記号のように並ぶ被害者たちの名前に、彼らが生きてきた証を肉付けする作業が必要だった。

連続殺人犯 (文春文庫)

小野 一光

文藝春秋

2019年2月8日 発売