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「撃たれた鹿のところにキツネがバッと駆け寄っていって…」 “クマ撃ち”を描く作者が感じた山中での野生のリアル

2021/08/06

 動物を巡る事件が相次ぐこの頃。今年6月には札幌の市街地にクマが現れたことも記憶に新しい。

 市街地を逃走したクマは、現地の自衛隊駐屯地に入り込もうとし、門を閉めようとする自衛官を押し切って駐屯地内へと侵入した。その映像は、見る者にクマと対峙することの恐ろしさを印象づけただろう。

©iStock.com

 奇しくもその日、北海道のクマ撃ちが主人公の漫画『クマ撃ちの女』の作者である安島薮太氏に話を伺うことになっていた。アウトドア志向や深刻化する野生生物問題もあってか、狩猟は注目を集めており、漫画でも狩猟を扱った作品は増えている。しかし、クマ相手に命を張った狩猟を行う作品は少ない。なぜいま「クマ撃ち」なのか? 趣味の狩猟者でもある筆者が話を聞いた。

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主人公の動機は「狂気」しかない

──狩猟、それもクマ撃ちをテーマにされていらっしゃいます。なぜこのテーマを選ばれたのでしょうか? 

安島 最初は担当編集者が「狩猟をテーマにしては?」という話をしてきたので、もともとは僕からの発案ではないんですよね。そこから「狩猟ならクマ撃ちが面白いんじゃないか」と思ったのがきっかけです。

 シンプルに狩猟と聞いていちばん面白そうなのが、「クマを撃つことかな」と思ったんです。今の日本で暮らしていると、リアルに自分の生死がかかることってそんな無いじゃないですか。だからこそ「クマ撃ち」にはそういう要素があるかなと。 

「クマ撃ちの女」1巻 BUNCH COMICS

──最近は狩猟関係の創作物も増えていますが、どちらかというと趣味の側面が強いものが多いと感じています。『クマ撃ちの女』の主人公・チアキも若い頃は「趣味だ」と言っていましたが、今はクマとの命のやり取りが主になっています。

安島 僕は取材をして、現実を元に漫画を作るタイプなんですけど、実際のクマ撃ちってほとんど利益につながらないんですよね。昔は商売になっていたみたいなんですけど、今は全然、お金にならない。だから、金銭をモチベーションにする人はいないだろうと。

 かといって、クマ撃ちを趣味にする人もなかなかいないでしょう。そう考えると、主人公の動機は「狂気」しかないんです。理詰めで考えていったらそうなった感じですね。