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「分籍してください」

——直接伝えたんですか?

ゆう 手紙を送りました。父親と折合が悪くて、家を出ていたので、手紙でカミングアウトしたんです。何通か出したんですけど、返事が来なくて、最後の手紙にしようと思って「治療を始めたいです」って伝えました。そしたら突然僕の職場に電話が来たんです。

——お父様から?

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ゆう いや、父の彼女ですね。母とは前に離婚していて、そのあとに付き合った彼女です。面識はあったけど、いきなり電話がきて、「ちょっと話があるから○日にここに来れない?」と言われて、後日会いに行きました。

©石川啓次/文藝春秋

——その時はお父様の彼女と2人ですか?

ゆう 2人です。父抜きで。何を話されるんだろうとドキドキしながら行きました。最初は、もしかして和解するのかなって期待していたんですよね。そしたら、いきなりテーブルに紙を出されて、「分籍してください」って。

——分籍。

ゆう 籍を別にしてほしいって言われました。2人がちょうど結婚するタイミングだったみたいで。「トランスジェンダーとかゲイとかってテレビの中の人だけだと思ってた。受け入れられないし、ちょっと無理だ」という父からの言葉を伝えられました。

——お父様の彼女も同じ気持ちだったんですか?

ゆう 彼女からは「あなたの生き方には肯定もせんし否定もせん。だけど父親と弟に迷惑かけたら私は許さんけんな」って言われたんです。「え、どういうこと?」って思いました。その言葉にビックリして、何も言い返せずに、鼻で笑っちゃいました。でも、自分の気持ちは抑えて、大人の対応で、「分かりました」と一筆書きました。もうそこから会ってないですね。13年くらい。

©石川啓次/文藝春秋

——ご兄弟とも会われていないんですか?

ゆう 弟が1人いるんですけど、会っていないです。父親と同じ考えみたいですね。今も音信不通です。

バイト先で出会った2人

——お2人の出会いはどういうものだったのでしょうか?

ゆう 出会ったのはバイト先です。僕がコンビニでバイトしていたんですけど、そこにみいちゃんが新しく入ってきました。

——お互いの第一印象はどうでした? 

みい すごくチャラそうだなと思いました(笑)。派手な髪色で、モテてそうな風貌で、絶対遊んでそうと思いましたね。でも、顔がタイプで、一目惚れに近い感じでした。その時のゆうは、すでにホルモン治療もしていたので、外見も声も完全に男性でした。