海外ゲーム会社はプロジェクト型
ところが、海外のゲーム会社では日本と異なるスタジオ制を採るところが多く、分業が進んでいます。調達はパブリッシャー系だけでなくいろんな種類のコンテンツファンドから資金をかき集めるのが一般的であり、製作委員会が組まれプロジェクト出資によって機動的に組織ができたり解散したりするのが常です。スタジオにいる常勤のメンバーはさほど多くなく、プロパーではない多くのクリエイターはひとつの仕事を終えると別の仕事へと移動していきます。
日本型の組織は比較的安い人件費でクリエイターや開発者が拘束されるのに対し、これらのプロジェクト型の仕組みは彼らに対して時間あたりは割高で、会社組織の中にノウハウが溜まりづらいという欠点はあれども、必要ないときに人件費を払う必要がないという点で合理的です。
それでも、日本のゲーム会社もゲームの販売(パブリッシング)を行うにあたって、海外の制作スタジオとタイトルごとの契約をしたり、インディーで才能を発揮している開発者に資金をつけて有償でパイロット版を制作させるケースも増えてきました。徐々に対応を進めているところではあるのですが、日本のゲームシーンでどうしても足枷になるのはむしろ日本市場の独自性です。
日本のヒット作は海外作品に影響は与えたけれど
日本では確かに「ウマ娘」、かつては「怪盗ロワイヤル」「Fate/Grand Order」「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」といったヒット作が出て、多くのプレイヤーを魅了して一大市場を作りました。これらのコンテンツのテンプレがある程度普及して多くの海外作品に影響は与えたものの、海外のスマホゲーム市場で支配的な地位を確保するような代物になったかと言われれば実に微妙なところです。
日本市場では無双できても、ゲームコンテンツの文脈では世界市場で苦戦をするタイトルばかりがスマホ向けで流行る、というのは良し悪しです。他の国のスマホゲーム市場に比べれば相変わらず日本のゲームユーザーは課金してくれる傾向は高いのですが、世界的に見て独特な日本人課金プレイヤーの嗜好にのめり込んでゲーム作りをしても、世界的なヒットにまで漕ぎ着けることは困難が大きいかもしれません。
加えて、ゲームを支える表現系で見るならば、いわゆる萌え絵のようなヲタカルチャーをベースにしたキャラクターデザインを前面に出したゲームはほぼ中国や韓国、東南アジアや一部英語圏・仏語圏・露語圏にも浸透し、これはこれで一大ジャンルになりました。ところが、コンテンツビジネスの観点からすると、これらのコンテンツボリュームは概ねにおいて中国市場や開発会社の「物量」に圧倒され、女性キャラクターのテンプレ化が進むと中国製ゲームによって日本の市場も蚕食されるようになってしまいます。
中国ゲームメーカーも中国人クリエイターも、かなり綿密に日本のヲタカルチャーを観察し、うまく模倣することで、市場的に圧倒的なボリュームである中国市場のヲタ向けに多くのコンテンツを投入してきました。その結果として、あっという間に日本のオタク向けゲーム制作能力を上回ってしまった、というのが実際ではないかと思います。そして、むしろコンテンツの数も質も中国製に圧倒され始めています。