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中国ゲーム業界躍進の裏側にある“不公平な商慣習”とクールジャパン戦略の失敗

「電通に中抜きされた」など筋違いの批判にのめり込む前に

2021/08/13

日本が中国で自由にコンテンツを売ることはできない一方で…

 この問題の背景には、日本と中国の間での市場へのアクセスの自由度・透明性の問題があり、端的な話、日本のコンテンツ企業・ゲーム産業が中国でのサービス拡大を企図して参入をしたとしても中国文化局をはじめとするゲーム流通を審査する公的部門によって総量規制や表現規制の網をかけられ、自由にコンテンツを売り、コミュニティを作ることはできません。これは、アニメや漫画など幅広い表現系の分野で普遍的に起きていることであり、例えば「STAND BY ME ドラえもん」のような定番の日本コンテンツの販売においても、中国国内であれだけヒットしたにもかかわらず、制作した日本企業にはさしたる収益も還元されないという事態になりましたが、これも泣き寝入りせざるを得ません。

 他方、中国製ゲームコンテンツは日本市場では入り放題、プロモーションし放題であり、中国の大手ゲーム会社であるテンセントや、新しくゲーム産業に参入したアリババやバイトダンス(TikTokの運営会社)、さらにはMiHoYo(「原神」「崩壊3rd」など)、Yostar(「アズールレーン」「アークナイツ」など)といった特定資本の支援を受けた中華系企業がシェアを取っています。

©️iStock.com

 このような不公正な商慣行がゲーム業界、コンテンツ産業で横行していて日本のゲームメーカーが中国でのシェアをまったく取れていない状況で、日本の政策当局が立ち上げたプロジェクトというのは「クールジャパン戦略」とかいう微妙げな施策ぐらいです。こんなんで勝てるわけないじゃないですか。海外のコンベンションで日本のポップカルチャーを紹介するとか、その程度の作戦で相応に多額の税金を使い漫画やアニメ、ゲームを楽しんでもらうというところで止まってしまっているというのは実に残念なことです。

日本の開発者や技術者はなぜ安く働くことを強いられるのか

 むしろ、ゲームやアニメ、漫画の流通に手を入れるのであれば、冒頭に述べたような日本型のコンテンツ制作費の調達にあたって従前の資本と制作が一体化してしまっているような体制から脱却し、また、テレビ(地上波放送)ありきでタイアップや円盤、オンライン配信のベルトコンベア向けの粗製乱造をやるような体制を改める必要があります。ゲーム開発者もアニメを支えるアニメーターも、彼らがなぜ安い金額で働くことを強いられるかというと、安い予算で大量の本数をテレビ向け制作や年末商戦向けコンテンツの開発に使い、減少に転じたオタク市場でより細分化した需要のために低予算で制作を強いられるからに他なりません。

 昨今、私の身の回りでも中国企業に相応の高値でゲームプログラマーさんが引き抜かれるという事案があり、さらにヤクザゲームで筆頭のプロデューサーが中華系企業がカネを出すスタジオに鞍替えするという案件もありますが、これだって、単に「札束で顔を叩かれる」話ではなく、制作費用や自身のキャリアを考えれば、いままでの待遇自体が低すぎたことが背景にあるのでしょう。