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中国市場から自在に排除されている“クールジャパン”

 とまれ、日中間のコンテンツ業界のつばぜり合いは、中国の文化政策のど真ん中にゲーム・アニメや漫画が組み込まれたために、非関税障壁の形で日本企業のコンテンツが中国市場から自在に排除されているという事態を日本政府が黙認し、また適切に対処することもできなかったがために、結果としてクールジャパンを名乗る日本のポップカルチャーは中国ほかの市場で支配的な地位を簡単に失うことになった点は、よく理解をしておくべきだと思います。

 そうこうしているうちに、ゲーム制作では非常に重要な汎用ゲームエンジンも、またゲームを売り出すためのプラットフォーム事業も、さらにはオンライン配信をするためのCDSも概ね中国資本に押さえられてしまいました。本来、クールジャパンを名乗るのであれば、これらのゲーム産業、映像事業をより堅牢にするための取り組みにお金を出すべきだったのでしょう。

プレイ時間や同性愛ものを制御する中国の新たな制度

 今後、中国国内では大きな仕組みの変更が予想されます。というのも、先にも書いた通り、中国ではゲームは文化政策の一翼であり、と同時に社会的統制の対象であることから、ゲームは精神的アヘンであり、18歳未満は夜22時以降プレイ禁止を徹底するようゲーム会社に求めたり(2019年)、プレイ時間のアカウントごとの総量規制を一部法制化(2020年)するなど、青少年の健全な育成のためにゲーム会社にプレイ時間を制御するよう求める制度が次々と出てきています。

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©️iStock.com

 日本でも、かつて青少年の健全な育成の名目で16歳未満の子どもはゲームセンターに18時以降入場できなくなる旧風俗営業法での規制が入ったりし、また、香川県では子どものゲームプレイ時間を制限する条例が施行されて大混乱に陥るなどしておりますが、中国のゲーム規制はその延長線上でさらに先を行くものです。

 さらには、中国ではBL(ボーイズラブ)系のコンテンツを含めて、一部の省では同性愛を模した小説、イラスト、ゲームなどについてはこれらを違法とし、BLの同人小説を書いて発表した人物が逮捕され懲役10年6ヵ月の判決が下されるという事例まで発生しています。

ゲームは「精神的アヘン」!? 中国におけるゲーム規制が大幅強化で、ゲームメーカーも投資界隈もてんやわんやの巻。

 

 中国経済の影響力が大きくなるということは、日本の意見が通らなくなるというだけでなく、これらの規制や産業の流れも日本に大きな影響を与えるということです。中国本土でのサービスを制限された中国ゲームメーカー大手は、ビジネスチャンスや収益確保を求めて、より自由なコンテンツ販売も可能な日本市場に軸足を移してくることでしょう。

 それは、スマホ向けゲームだけでなく、e-sportsやPC向けゲーム、ゲームエンジン、セールスプラットフォームといった分野に出てくる可能性が極めて高く、現状ですでに中国市場からの恩恵をあまり受けられない日本のコンテンツ業界を守るために日本政府が何をしなければならないか、本格的に考えるべき時期がやってきたのではないかと思っています。

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