かの名探偵・御手洗潔がついに映画化されるが、島田荘司作品を未読の方にまずお薦めしたいのが、もう一つの人気シリーズ“吉敷(よしき)竹史もの”から、『北の夕鶴2/3の殺人』だ!

 主人公の吉敷は警視庁捜査一課の刑事。イケメン優男だが、五年前、妻の通子(みちこ)から別れを告げられ、現在は独身。

 年の瀬のある日、その通子から「声が聞きたかった」と五年ぶりの電話が。まだ彼女に思いを残す吉敷は、二日後、通子に似た身元不明死体発見との情報に接し、単身、正月休暇を取って、私的な立場で前妻の足跡を追ってゆく。

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 幸い死体は別人だったが、通子が現在暮らす北海道・釧路を訪ねた吉敷は、通子の自室マンションで殺人事件が発生、失踪中の通子に容疑がかかっていることを知るのだ。

 この事件がまた頗(すこぶ)る付きのありえなさで、現場マンション棟に“絶対”入れるはずのない二人の女がなぜか揃って通子の部屋で刺殺され、外の処女雪には足跡なし。同時刻、“顔のない”鎧武者の散歩(!)が目撃され、写真にもバッチリ写っている上に(でも足跡はない)、義経伝説ゆかりの「夜鳴き石」までが“すすり泣く”!

 これらの謎は吉敷が最後に解いてみせるからまだいいとして(よくないが)、凄いのは“ここから”。旧知の警部に土下座して通子の逮捕状請求を待ってもらった吉敷は、僅か二日のうちに失踪した通子を見つけ、さらに事件の真相まで解明しなくてはならない。

 しかも! 吉敷は真犯人(?)の闇討ちに遭い、全身打撲のうえ骨折。さらに交通事故を起こし、吹雪の北海道をフロントガラスのないレンタカーで、何度も嘔吐しながら疾走するのだ。大丈夫か吉敷!? 続きが気になる読者は書店に疾走だ!(亜)

北の夕鶴2/3の殺人 (光文社文庫)

島田 荘司 (著)

光文社
1988年7月 発売

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