端的だった選手宣誓
そして式のクライマックスである選手宣誓だ。昨今は弁論のような宣誓も見受けられるが、小松大谷の木下仁緒主将が、2年ぶりの開催となる甲子園大会の喜びを言葉にした上で「世界のアスリートから刺激を受け、一歩一歩、歩んできました」と東京五輪の話題も。そして「気力、体力を尽くしたプレーで、この夢の甲子園で高校球児の真の姿を見せることを誓います」と端的にまとめた。
時間にして45分の開会式はつつがなく終わった。103回続いてきたレガシーを紡ぎながら、簡素化し、コロナ対策を徹底したオープニングセレモニーだった。昨春のセンバツ中止以降、昨夏は無観客で甲子園交流試合を開催し、今春は1万人の限定ながら有観客で大会を実施。開会式は初日に登場する6校だけが甲子園を行進した。
そしてこの夏は、通常の行進とはいかないものの、全選手が開会式に参加。試合も無観客となったが学校関係者の来場は認めた。コロナ禍で行う式典は回を重ねる毎に洗練されてきた印象だ。
甲子園の閉会式に失望感が漂うことはないだろう
米子東(鳥取)と日大山形の開幕ゲームは接戦となり、4対1で日大山形が勝利した。米子東は9回に無死満塁のチャンスを作ったものの、マウンドに上がった日大山形の滝口琉偉が3者連続三振で火消しに成功した。
また、2日目の第2試合で、9回まで0対2と広島新庄にリードを許していた横浜(神奈川)がチャンスを迎えた。打席に入ったのは1年生の遊撃手・緒方漣。相手投手は、中学生時代にU-15侍ジャパンを経験し、1年夏からメンバー入りを経験してきた秋山恭平。
その2球目、緒方の打球がレフトスタンドに飛び込む。逆転サヨナラという奇跡的で、秋山にとってはあまりに残酷な結末を迎えた。
想像だにできぬ甲子園特有の劇的展開を生み出すのは選手自身の力だけではない。会場の雰囲気を作り上げる客席の応援であり、ブラスバンドの生音であり(今春は事前に収録した音源が使用された)、選手がプレーに徹することができる環境を大会側が用意することだと改めて実感する一打だった。
雨による順延が続き、この夏の甲子園の決勝と閉会式は、現時点では8月27日の予定だ。五輪と甲子園の閉会式を比べることなど無粋だが、少なくともあの日のような失望感には包まれることはないだろう。