当たり前のように、なにも考えずに飲んでしまっている牛乳。どうやって作られ、どのように我々のもとへと運ばれるのか? 知っているようで知らない牛乳の生産と流通を、“しゃしん絵本”というスタイルで教えてくれるのが、しゃしん絵本作家・写真家のキッチンミノルさんによる『たいせつなぎゅうにゅう』(白泉社)だ。
牛乳を題材にした理由、“しゃしん絵本”というアイデアの源、“キッチンミノル”という名前の由来などについて、ご本人に話を聞いた。
――『たいせつなぎゅうにゅう』は“しゃしん絵本”と銘打たれています。写真を使った絵本を作ろうというアイデアはどこからきたのでしょう?
10年ぐらい前に読んだのですが、長野重一さんが写真をお撮りになって、谷川俊太郎さんが文をお書きになった『よるのびょういん』という絵本があります。ドキュメンタリーと物語が混ざっている絵本で、こんな表現の仕方があるんだと驚いて、将来こういうのを作りたいなと思っていました。で、水揚げされたマグロが、港、市場、魚屋を経て食卓に上るまでを写真で追いかけた『マグロリレー』を2019年に発表したんです。これが“しゃしん絵本”のルーツになっていて、『たいせつなぎゅうにゅう』では撮影の協力をお願いする際に、『マグロリレー』を手にしながら「こういうのを作りたいんです」と説明していました。
――数ある食材のなかから、牛乳をテーマに選んだ理由を教えて下さい。
いろんな人が関わっている物事にすごく興味があって、食材にかかわらず題材は常に探していて。そうしたらある広報誌の仕事で、生乳日本一の北海道別海町へ取材することになって、今回お世話になったたんぽぽ牧場に伺いました。それで牛乳に関わる人がいっぱいいると知ったのと、牛乳豆腐を食べたんですよ。牛乳豆腐って、食べたことあります?
――いや、名前も聞いたことがないです。
仔牛を産んで1週間くらいの牛乳で作ることができる、昔から酪農家が食べているものなんですよ。ちょっとお酢を入れるとチーズになる。それを食べた時に、仔牛を産まないと牛乳は出ない、という当たり前のことに気づいて。人間も基本的に子供を産まないと母乳が出ないように、牛も1年に1回は仔牛を産まないと、その後の9ヶ月くらいは牛乳が出ない。それまでは気にしたことがなかったけど、すごく大事なことだと思って。これをなにかしら形にできないかなと思ったのが始まりですね。