桃山さんは退職するも、その後、加害者のAは…
エスカレートするAのストーカー行為に追い詰められた桃山さんは、家族や彼氏に相談をして会社を辞めることを決意。ちょうどAと進めていたプロジェクトもひと段落するタイミングだったため「今しかない」と、勢いに任せて退職した。
「そのときに悩んだのが、LINEをブロックするタイミングでした。Aのせいで会社を辞めなければならない状況にも腹が立っていたので、会社にすべて報告するつもりでした。
でも、会社に報告したあとにブロックすべきなのか、先にブロックすべきか、逆上されたら警察に行くのか、むしろ今の段階で行ったほうがいいのか……対策について考えなければならず、結果的にキライな相手のことを考える時間が増え、本当に苦痛でしたね」
最終的に、彼女は会社にすべて報告したうえで退職の意思を伝え、有給消化中にAをブロックした。会社には、Aから送られてきたメッセージをスクリーンショットし、職場で言われた言葉などを文章で証拠として提出。作業は1日がかりだったという。
「会社側はとても真摯に対応してくれて、社長から謝罪もしてもらいました。社長経由で本人に注意をしてもらい、今後私に一切会わないという誓約書を交わしたそうです。ただ、その面談の際にも『直接会って謝りたい!』と言っていたらしく、社長に一喝されたとか。最後の最後まで理解不能でした」
ストーカー被害に遭ってから3年、現在は別の職場で穏やかに過ごしている桃山さん。今思い返しても、事故に遭ったような気分だという。
「私が彼にしたのは、業務上必要な会話と同僚と話す範囲の雑談のみ。1度だけ騙されてカフェに行きましたが、それ以外でふたりきりで食事に行ったり、勘違いさせるような態度を取ったりした記憶が一切ないんです。どう考えても理不尽としか思えません。初めの頃のスタバのギフトカードを断ればよかったんですかね……?」
桃山さんの困惑した表情が印象的だった。
2020年6月、静岡県沼津市の大学生・山田未来さん(当時19歳)が殺害された事件では、同じ大学に通っていた堀藍被告(21歳)が殺人の容疑で逮捕された。彼は山田さんに一方的に好意を寄せ、LINEで交際や面会を迫るメッセージを29回送っていたが、彼女にLINEをブロックされたことに腹を立てて犯行に及んだ。山田さんの刺し傷は49カ所にのぼっていたという。あまりに身勝手な犯人の動機に衝撃を受けた人も多いだろう。
被害者に大きな苦痛と負担を強いるストーカー犯罪。とくに職場や学校などで顔を合わせる関係性の場合、被害を訴えにくいという問題もある。さまざまな課題を解決し、一人でも多く被害者が減ることを願わずにはいられない。