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370年の刑に服さなければならないというのです

 加えて検察側はいくつかの罪で裁くことを予審の段階で裁判所に申し立ててきました。その中のひとつに「マン・アクト法違反」というものがありました。

 当時から約80年前の1900年代初頭にアメリカで無敵を誇った黒人のボクサーがいました。このチャンピオンは勝利をすると、愛人の白人の娼婦をリングに上げ、これ見よがしに熱く抱擁をしてみせたのです。

 人種差別の厳しい時代でした。晩メシもノドを通らぬほどの屈辱感に燃えた白人社会が、この蛮行を阻止せんとつくった法律が「マン・アクト法」でした。

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 この法律は、「州や国境を越えて猥褻な目的で、何人も米国内で活動をしてはならない」というものです。この古色蒼然たる埃のかぶった法律を、約80年ぶりに検察当局は裁判に持ち出してきたのでした。

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 予審の段階で私にかけられた容疑は66ありました。15人のスタッフには「ビザの詐取」「共謀罪」「証拠隠滅」「マン・アクト法違反」の容疑が4つかけられましたが、私はスタッフ15人の主犯として60の容疑をかけられ、それに自分の罪4つと、不明な理由の2つの罪が加わり、「66」の罪で起訴されたのです。

 日本には包括一罪という法解釈がありますが、米国では違いました。ひとつひとつの罪に判決をくだすというやり方です。

 弁護士によれば検察の主張通りに判決が下れば、私は370年の刑に服さなければならないというのです。

 話を聞いて脱糞しました。