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遺体管理人に会いに行く

「死」について、まだまだわからないことがある。

 事故物件に住んでいるだけでは、人が死んだあと、その肉体がどうなるのかまではわからない。だから僕は、遺体管理人の嘉陽果林さんに会いに行った。

 遺体管理人とは、葬儀社からの依頼でお通夜から火葬までの遺体の状態を管理する人のこと。遺族や参列者が故人と対面できるように、遺体の見栄えを整えるのが主な業務であるという。

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夜の黄泉比良坂 ©松原タニシ
「黄泉の国への入り口」と書かれている ©松原タニシ

 遺体にメイクを施し着付けをして納棺する「納棺師」とは違い、荼毘にふすまで遺体が変わらないように管理するのが遺体管理人だ。

 世の中には死亡直後の遺体の顔を見て「火葬するまでその顔のままでいる」と思っている人がかなり多い。しかし眠っているような状態は死亡後24時間までであり、遺体は時間の経過とともに予想もしない変貌を遂げてしまう。さらにその後、12時間ごとに着実に変化が顔に表れる。なので、そこをしっかり変わらないよう荼毘にふすまで嘉陽さんは遺体をサポートし続けている。

4000体以上の遺体と向き合って導き出した“3原則”

 今まで約4000体以上の遺体と向き合ってきた嘉陽さんは、様々な経緯で遺体となった人間の姿をできるだけおだやかな顔にする「安心できる3原則」を導き出した。それは「目を閉じている、口を閉じている、肌色である」こと。

 ケガで損壊してしまった、病気で痩せてしまった、顔の色が変わってしまったなど、人の死に方はそれぞれだ。そんな遺体の顔を見て、遺族ですら怖がることもある。遺族が死を受け入れるためにも、しっかり寄り添えるような顔が必要であると感じた嘉陽さんは、浮腫を取ったり、鬱血をなくしたり、ふっくらさせたり、顔の腫瘍の切除をしたりと、すべてオリジナルで模索した。

日中の黄泉比良坂 ©松原タニシ

 そうしてたどり着いたのがこの3原則。

 この3つの状態をクリアしていれば、遺族や弔問客は、比較的動揺しないで遺体を見ることができるという。